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砂漠の町とサフラン酒(2)

时间: 2022-11-03    进入日语论坛
核心提示: どこの国(くに)でも、いつの時代(じだい)でも、若(わか)いものは冒険(ぼうけん)を好(この)みます。また、働(はたら)いて身(み)
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 どこの(くに)でも、いつの時代(じだい)でも、(わか)いものは冒険(ぼうけん)(この)みます。また、(はたら)いて()をたてようと(おも)います。(ひろ)い、(ひろ)い、砂漠(さばく)のはてから、砂金(さきん)や、ダイヤモンドや、また、いろいろな(めずら)しい宝石(ほうせき)()るということを()くと、(かれ)らは(いさ)んで、それを()りに()かけようとしたのでした。どんなに、その(たび)(なが)く、つらくとも、()かけようとしたのでした。
 らくだや、(ひつじ)に、()をつけて、(かれ)らは、砂漠(さばく)(なか)をあるいていきました。毎日(まいにち)毎日(まいにち)(おな)じような単調(たんちょう)景色(けしき)がつづきました。そして、むし(あつ)(かぜ)()いていました。
「まだ、(みず)のあるところへはこないだろうか?」
「まだ、あちらに(やま)()えないかしらん。」
 こうして、(かれ)らは、(たび)をつづけていますと、ある()のこと、はるかの地平線(ちへいせん)に、(あお)(やま)姿(すがた)をみとめたのであります。(かれ)らは、どんなにうれしかったでありましょう。たちまち元気(げんき)恢復(かいふく)しました。はやく、あの(やま)へいって(はたら)こうと(おも)ったからです。(かれ)らは、ぴかぴか(ひか)黄金色(こがねいろ)(すな)(まぼろし)()ました。また、すきのさきに、きらきらと(ひか)(いし)のかけらを空想(くうそう)しました。(あか)宝石(ほうせき)や、ダイヤモンドの数々(かずかず)が、自分(じぶん)らの(てのひら)(うえ)(かがや)いている()(さま)想像(そうぞう)しました。みんなは、(みち)(いそ)ぎました。(あか)(まち)が、やがて(かれ)らの()(まえ)にあらわれたのです。
 砂漠(さばく)(なか)(あか)(まち)、それは、まったく(ゆめ)世界(せかい)でありました。サフラン(しゅ)は、あふれていました。(うつく)しい(おんな)が、(うた)をうたいながら、(まち)(なか)をあるいていました。南方(なんぽう)(よる)は、あたたかで、(つき)絹地(きぬじ)をすかして()るように、かすんでいました。
「このお(さけ)()しあがると、(つか)れがなおってしまいます。」と、(うつく)しい(おんな)たちがいいました。
 みんなは、(よろこ)んで、サフランの(あか)(さけ)()みました。すると、(おんな)たちのいったように、たちまちのうちに、(つか)れがなおってしまいました。ほんとうに、いい気持(きも)ちになってしまいました。
「なんという(あか)い、(うつく)しい(いろ)だろうな。」といって、若者(わかもの)はコップの(さけ)を、燈火(あかり)(まえ)(かか)げてながめたりしました。
 元気(げんき)恢復(かいふく)すると、(かれ)らは、いよいよ(やま)(ほう)()かって、(はたら)きにゆくために出発(しゅっぱつ)したのです。(かれ)らは、(やま)へいって、(いわ)(くだ)いたり、(つち)()ったりして(はたら)きました。
 しかし、いつまでも、(とお)他国(たこく)で、()らすという()にはなれません。(かれ)らは、ふるさとが(こい)しくなりました。そして、すこしでもたくさん、(かね)をためて、故郷(こきょう)(かえ)って、(うち)人々(ひとびと)(よろこ)ばし、安楽(あんらく)()(おく)りたいと(おも)ったのであります。
 (かれ)らは、ふたたび、砂漠(さばく)(なか)(たび)をする用意(ようい)をして、(やま)から()て、ふもとをさして(いそ)ぎました。(あか)(まち)が、「いまお(かえ)りですか?」というように、()(まえ)(わら)っているのでありました。
「くるときに、この(まち)で、サフラン(しゅ)()んだが、その(さけ)(あじ)(わす)れることができなかった。どれ、ひとつゆっくりと(さけ)()んでいこう……。」
 (かれ)らは、(まち)にはいると、(あか)(さけ)のコップを()にしました。
 酒場(さかば)(まえ)を、(うつく)しい(おんな)がやさしい、いい(こえ)(うた)をうたって(とお)りました。ちょうど、その(うた)(こえ)は、(うみ)(しお)のわく(おと)のようであり、(おんな)たちの姿(すがた)は、春風(はるかぜ)()かれるこちょうのごとくに、()られたのでした。
 一(ぱい)、また一(ぱい)と、()んでいるうちに、すっかり(あたま)(なか)にあった(かんが)えというものが、(から)になってしまいました。そこで、()ってきただけの(かね)を、(まち)(なか)使(つか)いはたしてしまったのです。
 (かれ)らは、(さけ)()いがさめきらぬうちに、まったく夢心地(ゆめごこち)でこの(まち)()って、()かけましたが、いつしか砂漠(さばく)(なか)で、()いがさめて、天幕(テント)のすきまから(ほし)(ひかり)(あお)ぐと、はじめて、なにも()たなくては、いまさら故郷(こきょう)へは(かえ)れないと(おも)ったのでありました。
 (かれ)らは、ふたたび(やま)へもどりました。そして(はたら)きました。また(いわ)()ったり、(つち)()ったりしました。
 (かね)がたまると、こんどこそは、故郷(こきょう)(かえ)って、みんなの(かお)をば()ようと(おも)いました。(かれ)らは(やま)(くだ)ったのであります。
 (あか)(まち)が、すぐ()(まえ)(ちか)づきました。(かれ)らはサフラン(しゅ)(あじ)を、(おも)()さずにはいられませんでした。
「もう、ふるさとに(かえ)れば、()もうと(おも)っても、()まれないのだから、一(ぱい)だけ()んでゆこう……。」と(おも)いました。
 (うつく)しい(おんな)たちは、(かな)しい、やるせない(うた)をうたいながら、酒場(さかば)(まえ)をあるいていました。若者(わかもの)たちは、夕焼(ゆうや)けのように(あか)い、サフラン(しゅ)(さかずき)を、(くちびる)にあてて(あじ)わっていました。一(ぱい)……もう一(ぱい)といううちに、(あたま)がぼんやりとしてしまいました。そして、()っているものは、みんなこの(まち)(つか)いはたしてしまって、ついに故郷(こきょう)(かえ)ることができませんでした。
 (かれ)らは、やがて(とし)をとり、気力(きりょく)がなくなり、永久(えいきゅう)にふるさとを見捨(みす)てなければならないのでした。
 そして、砂漠(さばく)のかなたに、(あか)(まち)が、不思議(ふしぎ)な、毒々(どくどく)しい(はな)のように、()(ほこ)っているのでありました。

――一九二四作――

 

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