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しいたげられた天才(1)

时间: 2022-11-03    进入日语论坛
核心提示:しいたげられた天才小川未明 獣(けもの)の牙(きば)をならべるように、遠(とお)く国境(こっきょう)の方(ほう)から光(ひか)った高
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しいたげられた天才

小川未明

 
 (けもの)(きば)をならべるように、(とお)国境(こっきょう)(ほう)から(ひか)った(たか)山脈(さんみゃく)が、だんだんと(ひく)くなって、しまいに(なが)いすそを(うみ)(なか)へ、(ぼっ)していました。ここは、山間(さんかん)の、停車場(ていしゃじょう)(ちか)い、(まち)(かたち)をした、(ちい)さな(むら)でありました。
 その一(けん)(いえ)へ、戦時中(せんじちゅう)に、疎開(そかい)してきた、家族(かぞく)がありました。からだの(よわ)そうな(おとこ)()が、よく二(かい)(まど)から、ぼんやりと、彼方(かなた)(やま)をながめて、なにか(かんが)えていました。季節(きせつ)(あき)にはいると、どこからともなく、(わた)(どり)があかね(いろ)夕空(ゆうぞら)を、(やま)(うえ)(たか)く、豆粒(まめつぶ)のように、ちらばりながら、()んでいくのが()えました。子供(こども)は、鳥影(とりかげ)のまったく(そら)(なか)()()まれて、()えなくなるまで見送(みおく)っていました。やがて()()れてしまうと、さらさらと(おと)をたて、西風(にしかぜ)が、()()雨戸(あまど)()きつけるのです。
「お(かあ)さん、いつ、東京(とうきょう)(かえ)るの。」と、子供(こども)()くのでした。
 あかりの(した)で、(ふゆ)着物(きもの)手入(てい)れをしていた、母親(ははおや)は、
新聞(しんぶん)()ると、また、二、三(にち)(まえ)空襲(くうしゅう)があったそうですよ。(わたし)たちが(かえ)っても、もうお(うち)がないかもしれません。だから、空襲(くうしゅう)がなくなってから、(かえ)りましょうね。」と、さとすのでありました。
 こう()くと、子供(こども)は、しかたがなく、おもちゃの木琴(もっきん)()()して、()らしはじめました。その(おと)は、(そと)(かぜ)(こえ)に、かき()されたけれど、子供(こども)は、さびしさをまぎらせていました。
 いよいよ戦争(せんそう)()わって、空襲(くうしゅう)(おそ)れがなくなると、この家族(かぞく)は、(ふる)いすみかへもどっていきました。そのとき、(いと)()れた木琴(もっきん)は、ほかの不用(ふよう)になった品物(しなもの)といっしょに、()てられるごとく、この(むら)(のこ)されたのでした。
 炭焼(すみや)きじいさんの、(まご)秀吉(ひできち)は、よく祖父(そふ)手助(てだす)けをして、(やま)から(たわら)(はこ)ぶために、村端(むらはずれ)坂道(さかみち)(のぼ)ったり、(くだ)ったりしました。そのたびに、ちょうど(みち)のそばにあった、古道具屋(ふるどうぐや)(みせ)さきにかかった、木琴(もっきん)(こころ)(うば)われたのです。
「どうでも、おじじにねだって、あれを()ってもらうぞ。」と、かがやく(ひとみ)楽器(がっき)()つめて、こう、ひとり(ごと)をするのでした。
 しかし、よく(はたら)(まご)の、この(ねが)いは(むな)しくなかった。ついに、その木琴(もっきん)が、秀吉(ひできち)()(はい)ったとき、どんなにうれしかったでしょう。(かれ)は、苦心(くしん)して、(ほそ)針金(はりがね)で、(いと)()れたのをつなぎました。(いと)(つよ)()って、ピン、ピンと、ひくと、いい(おと)に、一つ一つ、(はね)があって、雲切(くもぎ)れのする(あお)(そら)へ、おどり()がるような()がしました。
 (やま)や、(たに)や、木立(こだち)までがこの(おと)()いて、(きゅう)目覚(めざ)めたものか、いままでに(かん)じないほど、(よろこ)びと、(かな)しみの(いろ)()くしたのでした。また、(くも)までが、(した)()るように、(あたま)をたれるのでした。
「なるほど、いい(おと)()るのう。しかし、おまえは、不思議(ふしぎ)()だ。やっと(ある)くような(ちい)さなときから、あめ()太鼓(たいこ)()きで、その(あと)()って、()()になったことがあるし、水車場(すいしゃば)のそばを(とお)れば、じっと()ちどまって、(くるま)()(おと)(みみ)をすましたものだ。()まれつき、なんでも(おと)()きなのだ。だれから(おそ)わらなくても、こうして、木琴(もっきん)()らせば、いい音色(ねいろ)()るじゃないか。ひとつ、学校(がっこう)先生(せんせい)のところへいって、どうしたら、上達(じょうたつ)するか、お(はなし)をうかがったらいいぞ。」と、おじいさんは、秀吉(ひできち)()らす、木琴(もっきん)感心(かんしん)して()き、たばこをすいながらいいました。
先生(せんせい)に、()けば、おれが音楽家(おんがくか)になれるかどうか、わかるかい。」と、秀吉(ひできち)は、せきこんで、()きました。
学校(がっこう)先生(せんせい)は、オルガンでもピアノでも、なんでも()きなさるぞ。わからしゃらなくて、どうする。」と、おじいさんは(こた)えました。
 (やま)へいくときと、反対(はんたい)(みち)をいって、隣村(となりむら)にさしかかろうとする(とうげ)()つと、あたりに、()をさえぎるなにものもなくて、見晴(みは)らしが(ひら)けるのでした。盛夏(せいか)でも、白雪(はくせつ)をいただく(けん)(みね)は、(あお)山々(やまやま)(あいだ)から、夕日(ゆうひ)をうしろに、のぞいていました。その、こうごうしい、孤独(こどく)姿(すがた)は、いつも秀吉(ひできち)に、なにか(かぎ)りない、あこがれの(かん)じをいだかせるのでした。そして、これから、(かれ)(たず)ねようとする学校(がっこう)は、このとき、ひからびた(しろ)屋根(やね)を、()(した)()せていました。
(きみ)は、(うた)()きなのか、それとも、音楽(おんがく)()きなのか。」と、(あたま)(かみ)(なが)くして、うしろへなでおろした、まだ(わか)先生(せんせい)が、()きました。
「さあ、どちらかなあ。」と、秀吉(ひできち)は、(くち)ごもって、(かれ)(かお)(あか)くして、最初(さいしょ)質問(しつもん)に、自分(じぶん)がわからなくなりました。
(おとこ)は、なんでも、(おも)ったことは、いうのだぞ。)と、祖父(そふ)の、()ごろのいいつけが、()かびました。
 秀吉(ひできち)は、(かお)をあげて、先生(せんせい)()ながら、
「どちらも()きなんです。いい(おと)のするものなら、(みず)(おと)でも、(かぜ)(こえ)でも、()きなんです。先生(せんせい)、それは、やはり、音楽(おんがく)じゃないんですか。」と、秀吉(ひできち)はしんけんな()つきをして、先生(せんせい)に、ただしました。

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