この時姉は始めて
「この道を真直に行くと、直 きに彼 の大きな原に出る、すると向うに家が見える。泣かんで早くお帰り! ちょうど月も出たから……妾は此処 で見送っていますよ。」
二郎の声はもう涙に「じゃ姉さんは、やっぱり帰らないの……。僕は姉さんと一しょに行きたいから連れて行って頂戴! 僕は独りで帰るのは厭だ。」
姉は「そんなら、また明日彼の池の畔へ来ておくれ! きっと妾が待っていますから、而して楽しく話をしましょうね。」
「じゃ姉さんは明日も、来てくれるなら僕はきっと彼の池の畔へ行って待っていよう。」
「ああ、ほんとうに妾が待っててよ。」
「うんにゃ、僕の方が先に行って待っているんだ。」
「ほほほ
と、さびしげに姉は
「また明日にしてよ、今日はこれでお帰りよ。」
二郎は
しかし二郎の
「二郎や、それは魔物がお前を見込んでいるのだ。もうもう決してその池の畔 へ行くことはならんぞ。」
と、堅く言い聞かせた。その翌日のこと、二郎はいつもの山へ出掛けはしたが、
やがてその日の昼頃となって、もう大分仕事に疲れてきて、休もうかと思っていると、遠くで自分の名を呼ぶ声が聞こえる。二郎は握っていた青々とした小枝を
二郎は空怖しくなって、林の中に
「行こう行こう、二郎ちゃん! 妾は
と無理にその場を押し立てて、
……二郎は
其処で村の人達は
毎年初夏の頃になると、