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不思議な鳥(1)

时间: 2022-12-10    进入日语论坛
核心提示:不思議な鳥小川未明一車屋夫婦のものは淋しい、火の消えたような町に住んでいる。町は半ば朽ちて灰色であった。町には古い火の見
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不思議な鳥

小川未明


車屋夫婦のものは淋しい、火の消えたような町に住んでいる。町は半ば朽ちて灰色であった。
町には古い火の見やぐらが立っていた。櫓のさきには鉄葉ブリキ製の旗があった。その旗は常に東南の方向になびいていた。北西の風が絶えず吹くからである。また湯屋があった、黒いけむりが、町の薄緑色の夕空に上っている……車屋の家は、軒の傾いた小さな店で蝋燭屋ろうそくやの隣りにあったが、日が暮れるとじきに戸を閉めてしまうのが常である。老夫婦はなるたけ日暮方の寒い風に当らないようにしている。自分で枯木のような体だと思って大事にしている。どうせ老い先は余り長くない。けれど風を引いて早く死ぬにも当るまいと思っているらしい。昔は夜道でも車を引いて歩いたことがあったが、この四五年は車を人に貸しているばかりで毎日軒の柱に掛けた小鳥のさえずるのを見て日を暮している。庭へ出て蜘蛛を捕って来てやるのが課業しごとである。老婆は大きな眼鏡をかけて冬の仕事に取かかって襤褸つづれぬっている……鳥籠の上に彼方かなた家根やねの上から射し下す日はあたたかに落ちて、小鳥はくびかしげて澄み渡った空を細い竹の骨を通して眺めながら小声で囀り始める。それを見て目を細くして聞いているひげの白い老人は、いつしか自分の若かった時分の日のことを考え出す……。
「ああ、おれもあんな時代があったのだ。」……其様そんな空想にふけっていると、日は蔭って、小鳥は囀るのを止めてしまった。
「日がなくなって、晩方ばんがたの風は寒い、早く家へ入れてやるぞ。」
と老人は独言ひとりごとをいって、籠を柱からはずすと、大事に捧げて、自分等がふせる居間にもって行く。その時も小鳥は頭を傾げて、不思議そうに老人の顔や、家の暗い様子などを眺めながら……薄紅うすあかい胸の温毛ぬくげを動悸に波打たせていた。老人はこの小鳥の可憐しおらしい様子を見て、
「おお、怖くない。」といった。
この老夫婦には子もなければ、孫もなかった。夕飯の膳には、白い湯気が微かに上って、物静かに済むと、暗いランプの光りがすすけた一間を照す。へやの隅に置かれた小鳥はランプの火影ほかげに驚いて黒いつぶらな眼を見張って撞木とまりぎを渡り始める。
「夜だぞ、こうやって休め。」といって、老人は風呂敷を持て来て籠の上から掛けてやる。風呂敷を掛けられると、又急に籠の中は薄暗くなって、鳥の動くのがしずまってしまう。
老人はる時、鳥籠を枕許まくらもとに持って来る。鼠が出るのを心配した。頭を枕に付けて、まだ眠らずにいると外を通る人々の足音が聞える。隣の蝋燭屋では話声に混って笑声などがしていた。しばらくすると人足が杜絶とだえて四境あたりが静かになったかと思うと、直ぐ戸に近く草鞋わらじの音がして、歌をうたって行く。
此処ここと出雲崎とは…… 竿させば届く――竿をね……。」
老人はこの歌を聞いて、この人は浜へ帰るのだと思った。――こう考えていると、又自分が若い時分、春の海を見ながら、赤い崖の下を通った時の記憶などを呼び起した。
振向いて婆さんを見ると、微かに寝息の音が聞かれた……。
 
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