ぼくも、兄弟がほしかった。
ある日、お母さんと一緒にねると、トクントクンと聞こえたんだ。目をさますと、何も音は
しない。またねると、小さな丸が見えたんだ。その中でトクントクンと聞こえる。何でか、赤
ちゃんだと思ったんだ。
次の日、朝一番に「赤ちゃんいるよ。今、これくらい。」と指で小さな丸を作ってお母さん
に知らせた。お母さんは笑って何も言わなかったけど、夕方ビックリ顔をしたお母さんが
「赤ちゃんできてた。」と言った。ぼくはうれしかったし、はずかしかった。
ぼくは、よく赤ちゃんの夢を見た。丸の中で、だんだん大きくなる赤ちゃん。かわいい女の
子。だけど、お母さんが言ったんだ。「なかなかチンチン見せてくれないから、男の子か女の
子かわからない。」って。だからぼくは教えた。「女の子だよ」って。
しばらくして、赤ちゃんは女の子だった。ぼくが話せば、お腹をけって返事をしてくれる。
ぼくがお腹をさわると、ボコボコ動く。そんな元気な妹が生まれ、ぼくは、お兄ちゃんになっ
た。
妹が生まれた一年後、またトクントクンと聞こえたんだ。次は元気な男の子。とんでもな
く大きく成長した弟が生まれた日、ぼくは二人のお兄ちゃんになった。
お兄ちゃんになってから、ぼくのジゴクの日々が始まった。何でも後回しにされ、あまり
相手にされなくなった。すぐに、「お兄ちゃんなんだから。」と言われる。でもね、ぼくまだ子
供なんだよ。だから、たまにはあまえたいんだ。
妹と弟が大きくなると、ぼくは二人のオモチャになってしまった。たたかれたり、かみの
毛をひっぱられたりする。はじめはいたくて泣いたんだ。だけど、それを見て笑う二人の
笑顔がかわいくて、がんばってしまう。そしていつの間にか、やさしいお兄ちゃんになって
しまった。
妹と弟が生まれて、ぼくは二人がいらないと思った事もあった。だけど、今は三人一組。何
するにも、どこ行くにも、三人一組。そしてぼくが先頭に立つ。
兄弟って意外といいな。ぼくをお兄ちゃんにしてくれた妹と弟に、ありがとう。