九十九里浜(くじゆうくりはま) (千葉県)
源頼朝が浜に刺した、九九本の矢に由来
「九十九里浜」は、砂浜の海岸線としては日本一の長さである。北の刑ぎよう部ぶ岬から南の太たい東とう崎ざきまでの全長は、およそ六〇キロ。さすがに九十九里浜と名付けられるだけのことはある。
ところで、この「九十九」という数は、とにかく多いことをあらわしたいときに使われる数字で、幾重にも曲がる道を「九つ十づ九ら折おり」というのが代表的な例だ。地名にも石川県の「九つ十く九も湾」、長崎県の「九十九島」などがある。
九十九里浜も同様に、やたら長い砂浜だったために、この名称になったのだろうと考えるのが妥当だ。
ところが、「九十九里」という距離は、実際に測定して出てきた数字なのだという。ただし、現在の一里を約四キロというメートル法で換算した数値だと、約六〇キロの九十九里浜は一五里ということになる。
換算は、古代の度ど量りよう衡こうに基づいて六町を一里としておこなう。一町は約一〇九メートルだから、「一〇九×六×九九」を計算すると、約六五キロという答えが出てくる。これが、現在の九十九里浜の長さの近似値である。
砂浜は、堆積したり砂が波に運び去られたりして、歳月を経るうちに長さを変えることはありえる。やはり実測に基づくというのは真実かもしれない。
さて、その実測をおこなったのは、なんと源頼朝だったと伝えられている。砂浜の片方の端から六町ごとに矢を立てていくと、九九本目で反対の端になったので、九十九里浜としたのだという。