金時山(きんときやま) (神奈川県・静岡県)
足柄の四万長者の娘・八重桐の息子が金太郎だった
童謡『金太郎』では、「♪あ~し~が~ら や~まの」と、金太郎の出身地が「足あし柄がら山やま」であることを、ちゃんと歌詞に歌い込んでいる。その足柄山とまとめて通称された足柄山地があるのが神奈川県と静岡県の県境で、金太郎伝説は、この地に古くから存在する伝説である。
その伝説では、足柄山中にある地蔵堂が金太郎の父祖の地ということになっている。
地蔵堂に住んでいた足柄兵太夫という名の四万長者が金太郎の祖父で、長者の娘・八重桐が酒田家に嫁いで身ごもったのが金太郎だった。ただ、八重桐は酒田一族の争いから足柄へ戻って、地蔵堂で彼を産んだ。
その後彼は、足柄山中でクマと相撲の稽古をして怪力少年に育つのである。
その時代に、金太郎が遊んだ長者の家の庭にあったという「かぶと石」と「たいこ石」は、いまでも地蔵堂地区に「金太郎の遊び石」として残っている。
このほか、長者屋敷跡は「金太郎生家跡」とされ、金太郎が産うぶ湯ゆとした「夕日の滝」「八重桐の腰掛石」などもある。地蔵堂の堂内にある「山やま姥うば像」は、金太郎の母像だという。
そして、大江山酒しゆ呑てん童子退治で名をあげる、源みなもとの頼より光みつ家臣の四天王のうちの一人、酒田金きん時ときは、成人した金太郎であり、かの怪力少年の後日談である。
足柄山地のなかの「金時山」が、彼の名をいまに伝えているというわけだ。