明治時代を代表する文学者の一人・正岡子規は、「歌よみに与ふる書」と題した文章を新聞に連載し、その中で、『古今集』やその代表的歌人・紀貴之らを激しくこき下ろしています。
「貴之は下手な歌よみにて『古今集』は下らぬ集」と言い、続けて、かく言う自分も、数年前までは『古今集』を崇拝していたから、多くの人が崇拝するのも分かる。しかし、三年の恋が覚めてみれば、何という意気地なしの女に化かされていたかと、悔しくてならないと言います。そして、つまらない歌の例として、次の歌を挙げています。
心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花
(もし折るとすれば、当てずっぽうに折ってみようか、初霜が一面に置いて、どれがどれだか見分けにくくなっている白菊の花を)
子規によれば、このような歌は嘘の趣向であり、初霜ごときで白菊が分かりにくくなるはずがない、些細なことをやたら大袈裟に述べ立てる無趣味である、と。うーん、皆さんはいかかが思われますか?