ところが、第二艦隊の佐藤鉄之丞参謀長が、あれは舵がきかないのであって、東郷長官の判断は間違いであると見抜き、第二艦隊をそのまま直進させました。東郷が率いる第一艦隊も直進すべきだったと気づきますが、軍艦はすぐには元に戻れません。洋上をぐるりと大回りしてようやく第二艦隊と合流、やっと勝てたというわけです。海軍はこの作戦行動のミスをひた隠しにし、東郷平八郎が一躍大ヒーローになったのであります。
日本海海戦で、わが連合艦隊が撃った一弾がバルチック艦隊の旗艦パブロフの舵に命中して破壊しました。しかし、それが日本側には分かりませんでした。旗艦パブロフは舵がきかず、急にふらふらと迷走し始めました。それを見た東郷平八郎司令長官は、敵が日本の連合艦隊をすり抜けてウラジオストクへ逃げ込むつもりだと解釈し、全艦を左に向けました。