島(渡嘉敷島)で暮らしていると、夏、つぎつぎ人がやってきて、わたしはさながら民宿のおやじである。
子連れでやってくる客も多い。だいたい子どもは質問好きで、好奇心|旺盛《おうせい》だ。
「ハイタニさんの家は美術館みたいですね」
まず、よいしょする。
「ハイタニさんは服をどこへ隠しているのですか」
隠しているのですか、ときた。四十センチ幅の備えつけの洋服ダンスを教えると、中を開けて、おもむろにいったもんだ。
「あんがい貧乏やなァ……」
いい年こいて独り暮らしかと思うらしく、たいていの子がたずねる。
「独りで淋《さび》しくないですかあ」
わたしも負けじと逆襲する。
「あんた、およめにきてよ。少しくらいなら待つからさ」
すかさず返された。
「わたしにも選ぶ権利があるんですよう」
このごろの子どもの口にはとても敵《かな》わないが、子どもの客は楽しく、こちらまで浮き浮きする。
あそびじゅつ(遊美術)の子どもたちがやってきた。遊美術、いい命名だ。
たっぷり遊んで、ぼちぼち学べばいい、という考えの子ども集団である。
四日市市の子どもの本専門店「メリーゴーランド」の増田喜昭さん、仙台の「アトリエ自遊楽校」の新田新一郎さんらが中心になってつくった。
子どもが主人公という精神を尊重する。たとえば那覇でのワークショップ。平和通りの市場見学は、地図だけ持って、それぞれ自由に行動する。
沖縄の胃袋は? 自分の街で売っていないものは? 市場のおばちゃんたちは?
成果を、みんなで報告し合う。
話し好きのおばちゃんにつかまって、せっかくの市場なのに、じゅうぶん回りきれなかったと嘆く(?)子、マンゴージュースを特別大きなコップで飲ませてもらったと自慢する子、サトウキビやスターフルーツを見せる子、みな生き生きとして誇らしげだ。
わたしは海の話をせがまれた。
「タツノオトシゴは魚の仲間かな」
「マグロは、いつ、どこで眠ると思う?」
「イカは空を飛ぶか」
子どもたちの目がきらきら光っている。
天も浮かれたのか、島の二日間は快晴だった。
サンゴの海で、たらふく泳いだ子どもたち。水中メガネで見た熱帯魚。カヌーも、シュノーケリングも、はじめての経験だ。
夜は、グループに分かれ、それぞれ創作劇を披露する。みな名優、みな主人公。
ノボさんこと福尾野歩《ふくおのぼ》さんの「遊びうた」で最高に盛り上がり、楽しい夏の日は終わった。
私は思う。この子たちはしあわせだ。しかし……。子どもはみな、このしあわせを受ける権利がある。人の都合で自然に手をつけようとするとき、わたしたちは、それがほんとうに子どもたちの未来にとってどうなのか、じっくり考えてみる必要がありはしないのかと。