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兎の眼14

时间: 2018-10-27    进入日语论坛
核心提示: 14 泣くな小谷先生 小谷先生はしくしく泣いている。「くそったれめ!」と太田先生はまだ青い顔をしている。「そう興奮するな
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  14 泣くな小谷先生
 
 
 小谷先生はしくしく泣いている。
 
「くそったれめ!」と太田先生はまだ青い顔をしている。
 
「そう興奮するな」
 
 といっている足立先生は、眼に大きなくまをこしらえている。
 
「小谷さん泣くことあらへんで」
 
 折橋先生は、こまった顔をしていった。
 
「そや、泣くことあらへん」と太田先生もいった。
 
 このままではおさまらん、とまだ荒れくるいそうだったので、足立先生が三人をこの飲み屋につれてきたのだ。折橋先生と太田先生は、とくになかがいい。
 
「どさくさにまぎれて、だいぶなぐってやったけど、こんなところにくまをこしらえたら、わりにあわんなあ」
 
 足立先生はおだやかならんことをいっている。
 
「あんたら、坊ちゃんを気どって校長や教頭をたたいたらあかへんで。校長さんをたたいたら、これやろ」
 
 飲み屋のおかみは首を切るまねをした。
 
「もうちょっと姫松小学校におってもろてがんばってもらわんといかん。きょうび、いい先生はすくないんやから、あんたら自重せんとあかんで」
 
「わかっとる。わかっとる。おちょうしつけてんか」
 
 足立先生は顔をしかめた。いまごろ、どこか痛くなってきたらしい。
 
 小谷先生は鉄三がかわいそうでならなかった。りっぱにつとめをはたしたのに、とんでもない結果になってかえってきた。なぜ、山内先生はみな子をのけるときにだいてくれなかったのか、せめて手をもって外へ出してくれていたら、鉄三はとびかかっていかなかっただろうに。
 
 せっかく鉄三がいい仕事をして、友だちという仲間を自覚した日に、よりによって、こんな事件がおころうとは。鉄三がみな子を守ろうとして、山内先生にとびかかっていった気持を考えると、小谷先生はたまらない気がした。鉄三がいとしくてならなかった。
 
 鉄三を送っていって、バクじいさんに事情を話しているあいだ、小谷先生はずっと泣いていた。バクじいさんはそんな小谷先生をやさしい眼でながめた。そして大きな手で鉄三の頭をなでていった。
 
「鉄三はほんまにええ子じゃ。それでこそおじいちゃんの孫じゃ。みな子ちゃんは、いつまでもいつまでも鉄三のことをおぼえていてくれるわい」
 
 三人の先生は酒を飲むピッチがはやかった。やけ酒か、おこり酒かよくわからないが、ふだんよりたくさん飲んでいる。
 
「きょうのけんかだけとりあげて文句をいわれたら、たしかにおれは軽はくだったかもしれん。相手がさきになぐってきたとはいえ、先輩に手をかけたんだから。けれど、おれはいままでずっとしんぼうしてきたんやで。学級文集を作ったらいやみをいうし、家庭訪問をしたらあんまり人気とりするなよという。あんな、は虫類みたいな男はちょっとおらんな。文集を作りたくても作れない先生のことを考えてやれ、とさ。そんなこと、おれの知ったことか」
 
「そらおまえ、どこの学年でもいっしょやで。そんなやつに腹を立てとるより、ちょっとでもわかってくれる先生をふやしていく方が力になるのんとちがうか」と、折橋先生はもっさりいった。
 
「おれはおまえみたいに人間ができとらんから、そんなことを考えるまえに、悪いやつをやっつけてやりたくなる」
 
 太田先生はあちこちにやつあたりしている。
 
「そらおまえ、怪獣ごっこをやってんのやったら、それでええけど、ほんとに悪いやつはなかなかおれたちの前に、姿を見せんのとちがうか」
 
 そばできいていた足立先生は笑い出してしまった。
 
「ふたりとも学校の先生やめて漫才やれ」
 
「こんなとこで、じょうだんをいってもろたらかないまへんなァ」
 
 折橋先生はうらめしそうにいっている。
 
「小谷先生、すこし飲みますかあ」
 
 折橋先生に、酒をついでもらった小谷先生は、コップの酒を一息に飲みほした。折橋先生と太田先生は顔を見あわせた。
 
「ごめいわくかけてすみません」と小谷先生はいった。
 
「元気出しや」と太田先生はなぐさめた。
 
「足立先生、眼のところ痛くないですか」
 
「ひとのことをいう前に自分の眼を見たらどないや」
 
 と足立先生にいわれて、小谷先生はコンパクトを出した。まっ赤にはれあがっている。
 
「小谷先生はいい人やけど、そのめそめそ泣くのだけはなんとかしてんか。おれ、かなわんねえ」
 
「ごめんなさい」と小谷先生はまた涙が出そうになった。
 
「そらそら。まるで女学生やな。あんたが学校にきてから、おれは、はらはらしどおしで三キロほどやせたね」
 
「足立先生がですか」
 
 折橋先生はひやかし半分にいった。
 
 よく日、臨時の職員会議がひらかれた。
 
 さいしょに校長先生が発言した。
 
「きのうの出来事はたいへん遺憾であります。いずれ、わたしは教育委員会からおしかりを受けるでありましょうが……」
 
「だまっとったらわからへんがな、あほたれ」
 
 足立先生はきこえよがしにいった。
 
「わたしはこの学校をできるだけ民主的に運営するべく努力してきました。みなさんの発言を尊重して、できるだけわたし自身の意見はのべずに……」
 
「そやからあかんのや」とまた足立先生がヤジった。
 
「なにか恩を仇《あだ》でかえされたような気がします」
 
 校長先生はめずらしくきついことをいった。教頭先生と山内先生は小さくなっている。
 
「原因になった小谷学級の伊藤みな子さんのことでありますが、わたしは小谷先生の熱意にほだされて、小谷学級であずかることを許しました。しかし、こんなにたびたび事件をおこされては考えなおさざるを得ません。もちろん小谷先生の言い分もじゅうぶんおききしたい。ほかの先生のご意見もうかがって結論をくだしたいと思います」
 
 草下という一年生の学年主任が手をあげた。
 
「一年の組から問題がおこりましたので、わたしも責任を感じます。ただこんどの場合は校長先生にも反省していただきたい点があるように思います。伊藤さんをあずかるときの手続きがよくなかったと思うんです」
 
「手続きの問題なんかじゃない」
 
 足立先生のヤジがとんだ。草下先生はくるっと足立先生の方を向いた。
 
「足立先生、ひとの発言のさいちゅうにヤジをとばすのはやめてください。わたしはあなたの教育実践をたかく評価していますが、あなたのそんなヤクザみたいな態度はすこしも好きになれません。あなたのよさまで誤解されますからおやめなさい」
 
 拍手がおこったところをみると、足立先生は、ほかの先生にもだいぶ反感をもたれているらしい。
 
 足立先生が頭をかかえてしまったので、笑い声がおこって拍手がいっそう大きくなった。
 
 折橋先生や太田先生まで手をたたいて大よろこびしている。
 
「伊藤さんをこの学校にあずかるようになったとき、それを知っていたのは校長・教頭両先生と小谷先生だけです。学年で相談をしたわけではありませんし、職員会議ではかられたわけでもありません。だれも、なにも知らなかったわけです。それがこんどの事件を引きおこした一つの原因でもあると思います。伊藤さんのことが、みんなで話し合われていて、みな子ちゃんのことをみんなが知っていたら、きのうのことはなかったかもしれません」
 
 草下先生のいうとおりだ、自分の考えのおよばないところがあったと小谷先生は思うのだった。
 
「草下先生のご意見はもっともです。ぼくもそのとおりやと思いますけど、しかし、そのためにはうちの学校の教師ひとりひとりが障害児にたいしてある一定の理解をもっていなくてはいかんと思うんです。こういう公式の場所で発言すると、だれもかれも、ちえおくれの子どもの教育を大切にしているようなことをいうけど、じっさいはそうではないんですね。かれらのことをお荷物さんといったり、自分の学級にそういう子どもがいると、ことしはあたりが悪いなんて平気でいうでしょう」
 
 折橋先生は耳の痛い話をはじめた。
 
「ぼくがさっき、ある一定の理解をといったのは、障害児問題がよくわからなくても、その子たちといっしょに苦労を共にしてみようという、さいていの決意があるかどうかということをいったんで、はじめからお荷物さんなんていうとる教師がいるような職場では、草下先生の意見もけっきょくはきれいごとにおわってしまう」
 
 きょうは折橋先生、なかなか雄弁だ。
 
 村野先生が発言した。
 
「りっぱなご意見のようですが、小谷先生もふくめて、みなさん、子どもの立場に立ってものを考えていないように思います」
 
 浩二の問題で、折橋先生から同じようなことをいわれた村野先生の発言だったので、みんなは、いっしゅんぽかんとした。
 
「ちえおくれはひとつの病気なんですから、できるだけ設備のととのったところで、効果的な治療を受けなくてはいけません。そのために養護学校があるんです。本校のようなふつうの学校にきて、正常児といっしょに学習してなにが身につくんですか。子どもは苦痛なだけですよ。伊藤さんの場合でもあと一カ月すこしで転校でしょう。せっかくなれたと思ったら、また新しいところで苦労しなくてはならない、子どもがかわいそうですよ」
 
「はい」
 
 大きな声がした。足立先生だ。
 
「ヤジがとばせないので苦しい」
 
 みんな大爆笑だ。
 
「村野さんはまちがったことをいっているので訂正しておく」
 
 足立先生は高《たか》飛《び》車《しや》にいった。そういうものの言い方と、ようしゃのないところが煙たがられるところだろう。
 
「さきほど治療ということばを使われたが、胃が悪いから治療するという意味の治療だったら、村野さんはなにか勘ちがいをしているか、それとも無知かどっちかだ。大脳の細胞、つまり神経細胞が再生しないことぐらい中学生でも知っている事実で、ちえおくれの子どもの教育はそこがほかの教育とちがうところだ。村野さんは、なにが身につくんですかと反問されたが、その考え方が、こんにち精薄児教育のもっともまちがった考え方とされているのをごぞんじか。ドイツのビールフェルトに誕生したベテルで、ちえおくれの人たちと一生をすごしてきたある白髪の修道女がこういったんです。『効果があればやる、効果がなければやらないという考え方は合理主義といえるでしょうが、これを人間の生き方にあてはめるのはまちがいです。この子どもたちは、ここでの毎日毎日が人生なのです。その人生をこの子どもたちなりに喜びをもって、充実して生きていくことが大切なのです。わたしたちの努力の目標もそこにあります』村野さん、このことばをわれわれ教師はじっくりかみしめて考えんといけません。小谷先生はたぶんこの話は知らないはずだ。しかし、小谷先生がやってきたことは、このことばそっくりじゃないか」
 
 村野先生はかえすことばがない。
 
「小谷先生はきのうからこちら泣いてばかりいる。なにを泣くことがあるんですか。泣くな小谷先生と、みんながいってあげんといかん。さきほど話したベテルのボランティアの中には失業者や貧困者、非行少年さえまじっているという。ちえおくれの人たちのことを障害者とわれわれは呼ぶが、心に悩みをもっているのが人間であるとすれば、われわれとてまた同じ障害者です。小谷先生は、みんなもよく知っている臼井鉄三でさんざん悩んだ、血を吐くような思いで一歩一歩鉄三の心に近づいていった。小谷先生には問題児も、ちえおくれも、学校の教師もなにもない、みんな悩める人間だったんだ。きょう、みなさんは学校からかえるとき、西校舎のうらを見てからかえられるがいい。そこに二つの作品がある、じつにみごとですがすがしい作品がある。それは問題児の鉄三が、ちえおくれの伊藤みな子といっしょに作った感動的な作品です。あの鉄三があのみな子が、と思われるだろう。ちえおくれといわれ、問題児とかげ口をたたかれた子どもを、小谷学級の子どもたちはあたたかく受けとめ、先生もふくめてみんなが泥だらけになって生きてきた、そういうあかしがあの作品だと思う。わたしはそんな小谷先生を尊敬する、そして泣くな小谷先生とやさしくいってあげたい」
 
 足立先生はそういって腰をおろした。しばらくは職員室は水をうったように静かだった。
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