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アメリカ嫌い17

时间: 2018-10-26    进入日语论坛
核心提示:   イカとタコ ほろ苦く思い出した話がある。 熱心な教師がいる。何事も疑問を持つところから学ぶことは始まる。一つでも二
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    イカとタコ
 
 
 ほろ苦く思い出した話がある。
 熱心な教師がいる。何事も疑問を持つところから学ぶことは始まる。一つでも二つでもよいから、毎日、なにか疑問を考えてくるように……。そんな宿題を出された。
 少年は考える。真剣に考えたが何も思い浮かばない。先生の熱心さを思うと、どうにもつらくて学校を休んでしまう。そして考えた。
 ようやく一つの疑問が頭に浮かぶ。少年は意気揚々と学校に行って、それを告げた。
「イカとタコが結婚すると、その生まれた子の足は何本でしょう」
 先生は子どもにばかにされたと思って腹を立てる。少年は首筋をつかまれ、うす暗い理科準備室に、標本の骸骨《がいこつ》といっしょに立たされる。
 反省しろ、という教師のことばを、少年は懸命に考え、そして思った。
(先生が怒ったのは、ぼくが小学生なのに、結婚ということばを使ったからだ。きっと、そうに違いない)
 岩本敏男さんの『赤い風船』という作品に出てくる話だ。
 
 航空券発売窓口で、禁煙席の窓側を取ってほしいと頼むと、たばこはお吸いになりますか、とたずねられたという話を書いたら、似たような体験があるという手紙がたくさん寄せられた。
 マニュアルがあって、それをなぞっているだけだからそうなるので、自立的な判断の乏しい若者の増えたことを嘆く、という文面もあった。
 あの文を書いてすぐ、またまた苦い場面にでくわした。飛行機に乗るために、搭乗待合室のいすに座っていたら、係員がいった。
「恐れ入りますが、そこはお子様ひとり旅(お子様パイロットといったのかもしれない。なにかそういう意味のことをいった)のお席に取ってございますので、お立ちくださいませんでしょうか」
 呆気《あつけ》にとられた。
 子ども優先か。子どもは立たせておけ。思わず怒鳴りつけたくなったが、かろうじて自制した。
 老夫婦がいて、むっとした顔をした。立とうとしなかった。当然である。
 それをいった係員はごく若い人だった。
 ことばづかいからして、マニュアル通り仕事をしているのだろうが、情けない。
 
 子どもを大事にするということは、そういうことでは断じてない。
 マニュアル化した若者を嘆く気持ちが、わたしにないわけではないが、その若者を非難するよりは、彼や彼女らが、そんなふうに育てられ、仕向けられていく元のところのものに目を向け、吟味が加えられるべきではないかと思う。教育の問題もそうだし、企業のあり方も問われるはずだ。
 先の目撃は、武士の情け? で航空会社名は出さないが、すべての航空会社は一考も二考もしてもらいたい。
 儲《もう》け優先の心根が、人も社会もねじれたものにしてしまうのだから。
 イカとタコの少年は、今、どんなふうに成長し、この社会を、どう見ているのだろう。
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