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過熟の実13

时间: 2018-07-30    进入日语论坛
核心提示:13 外 泊 どこででも眠れる。 これは編集者として便利な特技の一つである。少なくとも、この「武器」があるとないでは、ずい
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 13 外 泊
 
 どこででも眠れる。
 これは編集者として便利な特技の一つである。少なくとも、この「武器」があるとないでは、ずいぶん疲れ方も違うだろう。
 けれど、その武器が逆に困った事態をもたらすことにもなる、ということを、希代子はこの晩痛感した。
 叔父の津山隆一が、希代子をホテルのバーへ連れて行ったのは、果して下心があったのかどうか。しかし自宅には「明日帰る」と言っていたことを考えると、やはりそこまで考えてのことだったかもしれない。
 ともかく、バーへ行った希代子は軽く水割りなど飲んだのだが……。
 とても、白石のことを津山から 訊《き》き出すどころじゃない。津山家へ向うタクシーで眠ったとはいうものの、寝が足りているわけでなし、寝不足プラスアルコールプラス薄暗いバーとくれば、眠くならない方がどうかしている。
 津山が何を話したかも、ろくに 憶《おぼ》えていない。たぶんアッという間にウトウトし始めていただろう。
「叔父さん……。ごめんなさい。今夜はくたびれてて、だめ……」
 何がだめなのか、はたで聞いたら誤解されそうなセリフも少々もつれて、津山は苦笑いし、
「じゃ、帰るか。それとも泊ってくかい?」
「泊って、って……。だめ。だめよ。叔父と 姪《めい》なのよ」
「分ってる。君だけ泊ってくか、って意味だ。それなら部屋を取ってあげる」
「どうも……。ご親切に」
 と言ったところまでは憶えている。
 でも ——次の記憶は、ベッドの中。いつものクッションとは微妙に違っていて、特に枕《まくら》が違う。
 目を開けて ——。まだ、夜中?
 そう思ったのは、部屋の中が真暗だったからだ。しかし、何だか違う……。
「そうか」
 起き上って、クラッとした。
 ここはホテルだ! もちろん、いかがわしいホテルじゃなくて、一流の都心のホテルではあるが。
 ナイトテーブルの時計を見ると、一時半。 ——夜とは思えない。
 ゾッとして、ベッドから出ると、カーテンを開けに行った。まぶしい光が 溢《あふ》れて、目をつぶってしまう。
「お昼過ぎ!」
 自分で 呆《あき》れた。——着たものはそのまんま。靴だけは誰かが脱がしてくれたらしい。
 服はしわくちゃ、髪もボサボサで、鏡を見るのが怖い。
「ああ……。参った!」
 やはり叔父に付合うんじゃなかった、とため息をつく。
 テーブルにメモがあった。
〈ぐっすり眠ったかい? この部屋は、僕がホテルのメンバーなので午後二時までは超過料金なしでいられる。部屋代は払ってある。希代ちゃんは寝顔が 可愛《かわい》いということを発見したよ。しかし、こっちは紳士的にふるまったからね。信じてくれ。
 また連絡する。
津山〉  
 二時までね……。
 希代子は、頭を振ると、取りあえず服を脱いでバスルームへ行き、シャワーを浴びた。
 目を覚まさなくちゃ! 見た目がどうかは二の次だ!
  ——やっと少しさっぱりして、しわくちゃの服を着ていると、電話が鳴って、フロントから。
「すぐチェックアウトします!」
 超過料金を取られたらたまらない。希代子はあわてて部屋を出たのである。
 
 マンションに戻って、とりあえず会社へ電話を入れる。
〈C〉の編集部はまだ半分くらいしか出社していないというので、少しホッとした。
「急な用は? ——ない? じゃ、もう少ししたら行くから」
 電話を切ると、ファックスが何枚か入っていた。一枚は倉田からである。病院からファックス? 希代子は笑ってしまった。
〈幸子の手がかりは、まだない。色々すまん。
倉田〉  
 とだけ。
 細川幸子は、あの家にもいなかった。
 倉田がライターとして頼んだのは、幸子が一時世話になっていたというオフィスだった。しかし、それが幸子の頼みだったのかどうか、希代子は確かめていなかった。そんな余裕もなかったのである。
 ともかく、藤村の代りをつとめるには力不足で、本人から辞退して来て、希代子はあわてて藤村の所へ駆けつけるはめになったのだった。
 幸子のことが心配でないわけではないが、ともかくやらなくてはならない仕事が山ほどあって、他の誰にも任せるというわけにいかなかった。
 細川幸子……。なぜ、病院から消えてしまったのか。
  欠伸《あくび》しながら、次のファックスを見て、ソファに腰をおろす。
〈希代子さん。
 何度か電話してみましたが、出られないので……。
 ぐっすり眠っておられたら、すみません。それとも ——恋人とどこかに泊ったのかな? 希代子さんの彼氏はどんな人ですか。興味があるな。
 ゆうべは、奈保ちゃんの家庭教師をさせられました。『点が落ちると会わせてくれなくなる!』と奈保ちゃん、本気でしたよ。
 では。
水浜〉  
 そして追伸風に、〈食事できるのを楽しみにしています〉とあった。
 わざわざファックスしてくる用件があったわけではない。それでも、水浜の字がこうして見られると、希代子はとても懐しい感じがした。
〈希代子さんの彼氏〉か……。
 いないはずがない。 ——どうしても、そう見られてしまう。
 そんな人、いないのよ。そう言ったところで、きっと水浜も信じてくれないだろう。
 でも、ゆうべ〈恋人とどこかに泊ったのか〉と気にしてくれているのが、何だかくすぐったいようだった。
「あーあ」
 と、伸びをして、思い出した。「そうか。お 腹《なか》が空いてたんだ」
 これだから、彼氏と縁がないのかもしれない。 ——希代子は自分で笑ってしまった。
 ともかく出かける仕度をし、着替えて気分も変える。格別忙しいときほど、お 洒落《しやれ》をしたい、といつも思う。
 髪振り乱して仕事をしている、と見られたくない。希代子の中には、いつもその気持があった。
 いや、なりふり構わず仕事に没頭している姿も、それなりに美しいと思うが、仕事だけの人生ではないという気もある。
 どんなに忙しくても、余裕を持っていたい。それが仕事のときのお洒落になる。
 でも、それにも限度がある。あと一日二日、この忙しさが続いたら、もう自分がどんな格好をしているかも忘れてしまうだろう……。
「 ——さあ、お昼を食べに行くか」
 と、口に出して言って、ふと、「そうか。水浜君と……」
 水浜と、どこで食事しようか。誘っておいて、そこを考えていなかった。
 水浜は大学生だ。堅苦しいフランス料理なんて、いやがるだろうか。
 でも、彼の雰囲気には何となく合っているような気もする。
 それとも、やはり若さに任せて、お腹一杯食べられる所の方がいいかな?
 希代子は、マンションを出ながら、何となく心楽しい気分になっていた。少なくとも、仕事以外の予定が一つはある。
 それがこんなに珍しいことだというのは、ちょっと寂しくもあったけれど。
 外へ出ると、もう午後もそろそろ夕方に近付いてくるころ。けれども、空は青く色濃く、よく晴れ上っていた。
 
「おはよう」
 と、編集部へ入って太田和也に向って言ってから、「いやだ、芸能人ね、まるで」
 と笑う。
「夕方出社で『おはよう』ですか」
 と、太田も笑って、「チーフ、ゆうべは外泊ですか」
 と少し小声になる。
 そういうデリカシーは持ち合せている男である。
「どうして?」
 と訊き返したのは肯定と同じ。
「編集長が何回か電話してました」
「久保田氏ね」
 分り切っている。けれども、希代子の中では「編集長イコール倉田」なのだ。だからつい念を押してしまう。
「今は出かけてます。でも、もう帰る時間かな」
 太田が腕時計を見る。
「時計を止めたいわ」
 と、希代子は言った。「何の用だろう?」
「さあ。あれだけ必死になってましたからね。結構急な用だったのかも」
「へえ」
 初耳である。しかも、留守番電話には何も入っていない。本当に久保田は電話してきたのだろうか? でも、太田が 嘘《うそ》をついて何になるというのか。
 希代子は首をかしげた。
「 ——他に何か?」
「インタビューページの写真、文句つけて来たそうですよ、先方が」
「ええ? 今さら、どうしようもないわよ」
「でも、えらく気を悪くしてるって。出版の重役に直接苦情が行ったらしいんだけど」
「やれやれね。 ——この前のブラウス屋さんの広告よりはずっとましでしょ」
「そう思いますけどね」
「老けて見える、って言われても、本当に老けてるんだもの、仕方ないわよね。もうあの人、六十二、三でしょ」
「でも、怒らせると本の売れ行きに響く、そう心配してるんですよ。編集長も、ピリピリしてます」
「OK。何かお気に入りの古い写真でごまかすわ」
 と、希代子は言って、ため息をついた。
「どこかから借りないと。 ——ええと、どこか貸しのある編集部、ないか!」
 と手帳をめくった。
 そんなときは、顔の広さと、普段の付合いがものを言う。
 あちこち電話をかけまくって、やっと適当な写真を貸してもらえた。
 ホッとしているところへ、久保田が現われると、
「おい、篠原君!」
 口を開くなり、こうだ。
「はい……」
 あれはどうなった、と言われて、「もう片付きました」と答えられるのは快感である。その一言が言いたくて、希代子は頑張るのかもしれない。
「インタビューページの写真 ——」
 と、久保田は言いかけて、自分の椅子にドカッと座る。
「別のと差しかえます。K社から借りる手はずを整えました」
 と返事をされて、
「そうか……。いや、それなら……」
 久保田は少し顔をあからめている。
「その前に、マンションに電話いただきました? 何の用だったんですか。私、ゆうべは遅くて」
「うむ? いや、何でもない」
 と、あわてて首を振って、それでも汗がふき出す。
 何だかおかしいわね、と希代子は思った。
 もちろん、前の編集長のようなことは、 まさかもうないだろうけど……。
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