カニの相撲
螃蟹相扑
天下人となった秀吉(ひでよし)は、大阪城(おおさかじょう)と言う、大きなお城に住んでいました。
战国大名秀吉住在一座叫做大阪城的大城堡里。
大阪城にはきれいな池があって、そこには金で作ったカニが置いてありました。
大阪城有一个漂亮的池塘,那里放着金做的螃蟹。
それも、一匹や二匹ではありません。
那也不是一两只。
大きいのやら小さいのやら、何百匹ものカニがキラキラと光り輝いていました。
大大小小的,几百只螃蟹闪闪发光。
ところが秀吉は、今度京都に新しい城を作ったので、そちらに引っ越す事にしたのです。
但是秀吉这次在京都建造了新的城堡,所以决定搬到那里。
そこで秀吉は、この池の金のカニを家来たちに分けてやる事にしました。
于是秀吉决定把这个池子里的金螃蟹分给家臣们。
「お前たちに金のカニを分けてやるが、誰にでもやるのではない。
“分给你们金螃蟹,但不是给所有人。
何故、カニが欲しいのか。
为什么想要螃蟹呢。
カニを、どう言う事に使うのか。
你们要这螃蟹做什么。
その訳を言うがよい。
我看你们的需求。
『それなら、カニをやってもよい』
“那样的话,可以得到螃蟹。”
と、思う様な訳を言った者にだけ、分けてやる事にしよう」
我就只分给理由讲得好的人。“
家来たちはみんなは首をひねって、何と言えば、あのカニをもらえるだろうかと考えました。
家仆们都绞尽脑汁想,要说什么,才能得到那只螃蟹呢。
そのうち、一人が進み出て言いました。
其中,有一个人说了出来。
「殿さま。わたくしは、床の間の飾り物にしたいと思います。ぜひ、一匹下さいませ」
“老爷。我想把它做成壁龛里的装饰品。请一定要给我一只。”
「おお、床の間の飾りか。それなら良かろう。お前には大きいのを一匹つかわそう」
“哦,是壁龛的装饰吗?那就好吧。给你一只大的吧。”
「はい。ありがとうございます」
“好的,谢谢。”
その家来は大きいカニを一匹もらって、得意そうな顔をしました。
那个家臣得到了一只大螃蟹,露出了得意的表情。
すると、もう一人の家来が言いました。
于是,另一个家臣说道。
「わたくしは、書が趣味です。ですから紙を押さえる文鎮(ぶんちん→紙が動かない様にする重り)にしたいと思います」
“我的爱好是书法,所以我想把它做成压纸的镇纸。”
「そうかそうか。文鎮なら良かろう。ただ、文鎮では大きすぎては邪魔だから、小さいのを一匹つかわそう」
“是吗?是吗?喜欢写字好啊。只是,在镇纸大了太碍事了,就给你一只小的吧。”
「はい。ありがとうございます」
“好的,谢谢。”
その家来は小さいカニを一匹もらって、少し残念そうな顔をしました。
那个家臣得到了一只小螃蟹,露出了有点遗憾的表情。
それからみんなは、次々と色々な事を言ってカニをもらいました。
然后大家一个接一个地说了很多话,得到了螃蟹。
「わたくしは、子どもや孫の代まで、いいえ、もっと先まで伝えて、家の守り神にしたいと存じます」
“我想给孩子和孙子辈都传下去,不,我想再传下去,成为家里的守护神。”
「わたくしは、・・・」
“我……”
「わたくしは、・・・」
“我……”
ところが家来の一人の曽呂利(そろり)さんだけは、みんなの様子を黙って見ているだけで、何も言いません。
然而,只有家臣之一的曾吕利先生,只是默默地看着大家的样子,什么也不说。
「これ、曽呂利。お前はさっきから何も言わないが、カニが欲しくないのか?」
“这个,曾吕利。你从刚才开始就什么都不说,你不想要螃蟹吗?”
秀吉が尋ねると、曽呂利はつるりと顔をなでて、
秀吉问道,曾吕利轻抚着脸
「いえいえ、もちろん、わたくしも頂きとうございます。しかし」
“不,当然,我也想要。但是。”
「しかし、どうした?」
“可是,怎么了?”
「わたくしの使い方は、一匹では足りませんので」
“我的理由,一只是不够的。”
「何?一匹では足りぬと。ふむ、一体何に使うのじゃ?」
“什么?一只不够。嗯,到底是干什么用的?”
「はい。わたくしは勇ましい事が大好きでございますので、あのカニに相撲を取らせてみたいのでございます」
“是的。我非常喜欢勇敢的事情,所以想让那只螃蟹试试看。”
「ほう、相撲か。なるほど考えたな。よし、では二匹をつかわそう」
“嗬,相扑吗?原来如此。好,那就用两只吧。”
「いえいえ、相撲はやはり東と西に分けて、横綱(よこづな)、大関(おおぜき)、小結(こむすび)、幕下(まくした)と、それぞれいなければ面白くありません」
“不,相扑还是分为东和西,如果没有横纲、大关、小结、幕下的话就没有意思了。”
「おおっ、確かにそれもそうじゃ。それでは曽呂利よ、残りのカニは、みんなそちにやろう。持っていけ」
“哦,确实是这样。那嚒,曾吕利啊,剩下的螃蟹都给你吧。拿去吧。”
「はっ、ありがとうございます」
“是的,谢谢。”
曽呂利さんはニコニコ顔で、残りのカニを全部持って行ってしまいました。
曾吕利笑嘻嘻的,把剩下的螃蟹都拿走了。
その為に、カニをもらいそこなった家来たちは、
因此,没能拿到螃蟹的家臣们
「曽呂利め、相撲とは考えたな。それならわしは、武者合戦(むしゃがっせん)とでも言えば良かったわ」
“曾吕利,我还以为是相扑呢。那我就说是武者合战就好了。”
と、悔しがったそうです。
好像很后悔。