少女はやさしかったおばあさんのことを思い出しました。
「ああ、おばあさんに会いたいなー」 少女はまた、マッチを擦りました。
ぱあーっと、辺りが明るくなり、その光の中で大好きなおばあさんが微笑んでいました。
火が消えるといなくなるなんていやよ。わたし、どこにも行くところがないの。
少女はそう言いながら、残っているマッチを、一本、また一本と、どんどん燃やし続けました。
おばあさんは、そっとやさしく少女を抱き上げてくれました。
「わあーっ、おばあさんの体は、とってもあたたかい。」
やがて、二人は光に包まれて、空高く昇っていきました。
新年の朝、少女は微笑みながら死んでいました。
集まった町の人々は、「かわいそうに、マッチを燃やして暖まろうとしていたんだね。」と、言いました。
少女がマッチの火でおばあさんに会い、天国へ昇ったことなど、だれも知りませんでした。