少女はまたマッチを擦ってみました。
辺りは、ぱあーっと明るくなり、光が壁を照らすと、まるで部屋の中にいるような気持ちになりました。
部屋の中のテーブルには、ごちそうが並んでいます。
不思議なことに、湯気を立てた、がちょうの丸焼きが、少女のほうへ近づいて来るのです。
「うわっ、おいしそう。」
そのとき、すうっとマッチの火が消え、ごちそうも部屋も、あっという間になくなってしまいました。
少女はがっかりして、もう一度マッチを擦りました。
するとどうでしょう。光の中に、大きなクリスマスツリーが浮かび上がっていました。
枝には数えきれないくらい、たくさんの蝋燭が輝いています。
思わず少女が近づくと、ツリーはふわっとなくなってしまいました。
また、マッチの火が消えたのです。けれども、蝋燭の光は消えずに、ゆっくりと、空高くのぼっていきました。
そしてそれが、次々に星になったのです。やがてその星の一つが、長い光の尾を引いて落ちてきました。
あっ、今、だれかが死んだんだわ 少女は、死んだおばあさんの言葉を覚えていました。
星が一つ落ちる時、一つの魂が神様のところへのぼっていくんだよ。