自爆テロを題材とした時事吟ととりあえずは言えると思う。「暗黒の虹」は原油のこととして、そうすると、原油パイプラインを狙ったテロリズムを描いていると読める。しかし句の仕立ては異様である。ここでは句の発話主体みずからが「自爆せん」としているのだ。石川啄木は「われは知る、テロリストのかなしき心を」と心情的に「かなしみ」を唄ったが、現在において私たちを巻き込んでいる状況はより複雑であり、また直接的でもある。この一句はむしろ「怒り」を通してテロリストと一体化する。そして、世界の裂傷としてのテロリズムを一句として定着してみせる。
暗黒の虹吹き上げて自爆せん