「育てなおし」は、幼児期由来の心理的外傷がある人を、理想的な幼児体験を疑似的に繰り返させることで治療すること、らしい。療法自体の是非はひとまず置くとして、こうした方法に対して違和感・うさんくささを感知するのはマトモな感覚であると思う。理想的なストレスのない幼児体験というイメージがそもそも眉ツバものなのだ。この句では「育てなおしの(育てなおしのための? 育てなおしの場面を書いた?)絵本」そのものがあっさり「舌を噛み切っ」てしまう。「切った」の過去形の断定に強烈な皮肉がこもる。
育てなおしの絵本が舌を噛み切った