一転して、表面上は〈かるみ〉の勝った句である。「パソコン」を「雲」にするという奇想、関西弁「どついて(殴って)」の8音字余りにしてのしつこい繰り返しは、昔なじみの漫才のように読者の顔に笑みを浮かばせる。だが、そこからじわじわと響いてくる思いは、どうしようもなく苦みを含んでいる。「パソコン」は電子機器そのものというよりは、この十数年で一気に私たちを巻き込んだ新しい情報環境の換喩だろう。あるいは、具体的なモノとしての「パソコン」は「どつく」ことができるのかも知れない。しかしその後に残るのは、掴みどころのない「雲」のような得体の知れぬ世界の感触でしかない。
パソコンをどついてどついて雲にする