「始発から」ということは、その後、一日ずっと「失望」しつづけるのだろう。5や8の句がこの世の手ごたえから圧倒されている存在の呟きだとすれば、こちらは逆に手ごたえのなさこそが世界の実体と言いたげだ。「かるく」というのは、この「失望」が大したことではない、というのではない。まったく逆である。この句で提出された世界感覚においては、深く重く「失望」することが許されていないのだ。「失望」とはネガティヴではあっても世界との関係の証しであるが、ここに示された関係はどこまでも「かるい」。そこに本当の意味でのキツさが浮かび上がる。「電車」はおそらくスケジュール通り、明日も明後日も明々後日も「失望」し続けるのである。
始発からかるく失望する電車