「ひとごろし」、許されざる罪であり、自己の生存についての問いも想起させる事象だが、それがそのまま日常の思考へと強い意識のないままに入ってきてしまう。心理的抵抗のなくなったそうした状況が、「すうすう入る」によって、倫理道徳的説明なしですとんと句になっている。この句が「すうすう」と読者のなかに入ってくるところに一番の怖さがあるのではないだろうか。川柳の批評性は、ある人間の事象に対する解釈を示すよりは、この句のように、事象のあり様を一筋でつかむ句のほうが有効であるかも知れない。
脳みそにすうすう入るひとごろし