「ここ、座ってもいいか」ロンが聞いた。
「うん、いいよ」ルーナがうれしそうに言った。「パパは、ビルとフラーにプレゼントを渡しに行ったんだもン」
「何だい 一生分のガーディルートか」ロンが聞いた。
ハーマイオニーは、テーブルの下でロンを蹴けろうとして、ハリーを蹴ってしまった。痛くて涙がにじみ、ハリーはしばらく話の流れを忘れてしまった。
バンド演えん奏そうが始まった。ビルとフラーが、拍はく手しゅに迎えられて最初にフロアに出た。しばらくしてウィーズリーおじさんがマダム・デラクールをリードし、次にウィーズリーおばさんとフラーの父親が踊おどった。
「この歌、好きだもン」
ルーナは、ワルツのような調べに合わせて体を揺ゆらしていたが、やがて立ち上がってすーっとダンスフロアに出ていき、目をつむって両腕を振りながら、たった一人で回転しはじめた。
「あいつ、すごいやつだぜ」ロンが感心したように言った。「いつでも希き少しょう価か値ちだ」
しかし、ロンの笑顔はたちまち消えた。ビクトール・クラムがルーナの空あいた席にやってきたのだ。ハーマイオニーはうれしそうにあわてふためいた。しかしクラムは、こんどはハーマイオニーを誉ほめにきたのではなかった。
「あの黄色い服の男は誰だ」としかめ面で言った。
「ゼノフィリウス・ラブグッド。僕らの友達の父さんだ」ロンが言った。ゼノフィリウスは明らかに笑いを誘さそう姿ではあったが、ロンの喧けん嘩か腰ごしの口調は、そうはさせないぞと意思表示していた。「来いよ。踊おどろう」ロンが、唐とう突とつにハーマイオニーに言った。
ハーマイオニーは驚いたような顔をしたが、同時にうれしそうに立ち上がった。二人は、だんだん混み合ってきたダンスフロアの渦うずの中に消えた。
「ああ、あの二人は、いまつき合っているのか」クラムは、一瞬いっしゅん気が散ったように聞いた。
「んー――そんなような」ハリーが言った。
「君は誰だ」クラムが聞いた。
「バーニー・ウィーズリー」
二人は握あく手しゅした。
「君、バーニー――あのラブグッドって男を、よく知っているか」
「いや、今日会ったばかり。なぜ」
クラムは、ダンスフロアの反対側で数人の魔ま法ほう戦士せんしとしゃべっているゼノフィリウスを、飲み物のグラスの上から恐い顔でにらみつけた。
「なぜならヴぁ」クラムが言った。「あいつがフラーの客でなかったら、ヴぉくはたったいまここで、あいつに決けっ闘とうを申し込む。胸にあの汚けがらわしい印をヴら下げているからだ」
「印」ハリーもゼノフィリウスのほうを見た。不思議な三角の目玉が、胸で光っている。
「なぜ あれがどうかしたの」
「グリンデルヴァルド。あれはグリンデルヴァルドの印だ」
「グリンデルバルド……ダンブルドアが打ち負かした、闇やみの魔法使い」
「そうだ」
顎あごの筋きん肉にくを、何かを噛かんでいるように動かしたあと、クラムはこう言った。