「どういう意味ですか」ハリーはミュリエルに聞いた。「妹がスクイブだなんて、誰が言ったんです 病気だったと思ったけど」
「それなら見当違いだぞぇ、バリー」ミュリエルおばさんは、自分の言葉の反響はんきょうに大喜びの様子だった。「いずれにせよ、それについちゃ、お前が知るわけはなかろう お前が生まれることさえ誰も考えていなかった大昔に起きたことだぇ。そのときに生きておったわたしらにしても、実は何が起こったのか、知らんかったというのが本当のところだぇ。だからわたしゃ、スキーターの掘り出しもんを早く読みたいというわけぞぇ ダンブルドアはあの妹のことについちゃ、長く沈ちん黙もくしてきたのだぇ」
「虚偽きょぎじゃ」ドージがゼイゼイ声を上げた。「まったくの虚偽じゃ」
「先生は妹がスクイブだなんて、一度も僕に言わなかった」
ハリーは胸に冷たいものを抱えたまま、無意識に言った。
「そりゃまた、なんでお前なんぞに言う必要があるのかぇ」ミュリエルが甲かん高だかい声を上げ、ハリーに目の焦点しょうてんを合わせようとして、椅い子すに座ったまま体を少し揺ゆらした。
「アルバスが決してアリアナのことを語らなかった理由は――」エルファイアスは感情が昂たかぶって声を強張こわばらせた。「わしの考えではきわめて明白じゃ。妹の死でアルバスはあまりにも打ちのめされたからじゃ」
「誰も妹を見たことがないというのは、エルファイアス、なぜかぇ」ミュリエルが甲高くわめきたてた。「柩ひつぎが家から運び出されて葬そう式しきが行われるまで、わたしらの半数近くが、妹の存在さえ知らなかったというのは、なぜかぇ アリアナが地下室に閉じ込められていた間、気高いアルバスはどこにいたのかぇ ホグワーツの秀しゅう才さい殿どのだぇ。自分の家で何が起こっていようと、どうでもよかったのよ」
「どういう意味 『地下室に閉じ込める』って」ハリーが聞いた。「どういうこと」
ドージはみじめな表情だった。ミュリエルおばさんがまた高笑いしてハリーに答えた。
「ダンブルドアの母親は怖こわい女だった。まったくもって恐ろしい。マグル生まれだぇ。もっとも、そうではないふりをしておったと聞いたがぇ――」
「そんなふりは、一度もしておらん ケンドラはきちんとした女性じゃった」
ドージが悲しそうに小声で言った。しかしミュリエルおばさんは無視した。
「――気位が高くて傲ごう慢まんで、スクイブを生んだことを屈辱くつじょくに感じておったろうと思われるような魔女だぇ――」
「アリアナはスクイブではなかった」ドージがゼイゼイ声で言った。