「いったい全体どうやって――」
「『検知けんち不ふ可か能のう拡大かくだい呪文じゅもん』」ハーマイオニーが言った。「ちょっと難しいんだけど。でも私、うまくやったと思うわ。とにかく、必要なものは何とか全部詰め込んだから」
ハーマイオニーは華きゃ奢しゃに見えるバッグをちょっと振ふった。すると中で重い物がたくさん転ころがる音がして、まるで貨物室の中のような音が響ひびき渡った。
「ああ、しまった きっと本だわ」ハーマイオニーはバッグを覗のぞき込みながら言った。「せっかく項こう目もく別べつに積んでおいたのに……しょうがないわね……ハリー、『透明マント』を被かぶったほうがいいわ。ロン、急いで着き替がえて……」
「いつの間にこんなことをしたの」ロンがローブを脱ぬいでいる間、ハリーが聞いた。
「『隠かくれ穴あな』で言ったでしょう もうずいぶん前から、重要なものは荷造にづくりをすませてあるって。急に逃げ出さなきゃいけないときのためにね。ハリー、あなたのリュックサックは今朝、あなたが着替えをすませたあとで荷造りして、この中に入れたの……何だか予感がして……」
「君ってすごいよ、ほんと」ロンが、丸めたローブを渡しながら言った。
「ありがと」ハーマイオニーはローブをバッグに押し込みながら、ちょっぴり笑顔になった。「ハリー、さあ、『透明マント』を着てちょうだい」
ハリーは肩に掛かけたマントを引っ張り上げて、頭から被って姿を消した。いまになってやっと、ハリーはさっきの出来事の意味を意識しはじめていた。
「ほかの人たちは――結婚式に来ていたみんなは――」
「いまはそれどころじゃないわ」ハーマイオニーが小声で言った。「ハリー、狙ねらわれているのはあなたなのよ。あそこに戻ったりしたら、みんなをもっと危険な目に遭あわせることになるわ」
「そのとおりだ」ロンが言った。ハリーの顔は見えないはずなのに、ハリーが反論しかけたのを見て取ったような言い方だった。「騎き士し団だんの大多数はあそこにいた。みんなのことは、騎士団が面倒見るよ」
ハリーはうなずいたが、二人には見えないことに気づいたので、声を出した。「うん」。しかし、ジニーのことを考えると、酸すっぱいものが込こみ上げるように不安が湧わき上がってきた。
「さあ、行きましょう。移動し続けなくちゃ」ハーマイオニーが言った。
三人は脇わき道みちに戻り、再び広い通りに出た。道の反対側の歩道を、塊かたまりになって歌いながら、千ち鳥どり足あしで歩いている男たちがいた。