「まあ、君は、たったいま、すごいショックを受けたばかりだしな」ロンは思いやりのある言い方をした。「いまのは何の呪じゅ文もんのつもりだったの」
「呪文はちゃんと効きいたわ」ハーマイオニーはかなり気を悪くしたようだった。「人がいれば姿を現す呪文よ。だけどここには、私たち以外に人はいないの」
「それと『埃ほこりじいさん』だけだな」
ロンは、死人の姿が立ち上がった絨毯じゅうたんのあたりをちらりと見た。
「行きましょう」ハーマイオニーも同じ場所を怯おびえたように見たあと、先に立って軋きしむ階段を上り、二階の客間に入った。
ハーマイオニーは杖を振ふって古ぼけたガスランプを灯ともし、隙すき間ま風かぜの入る部屋で少し震ふるえながら両腕で自分の体をしっかり抱くようにして、ソファに腰掛こしかけた。ロンは窓まど際ぎわまで行って、分ぶ厚あついビロードのカーテンをちょっと開けた。
「外には何にも見えない」ロンが報告した。「もしハリーがまだ『臭におい』をつけているなら、やつらがここまで追ってきているはずだと思う。この家に連中が入れないことはわかってるけど――ハリー、どうした」
ハリーは痛さで叫さけび声を上げていた。水に反はん射しゃする眩まばゆい光のように、ハリーの心に何かが閃ひらめき、傷きず痕あとがまた焼けるように痛んだ。大きな影が見え、自分のものではない激はげしい怒りが、電気ショックのように鋭するどく体を貫いた。
「何を見たんだ」ロンがハリーに近寄って聞いた。「あいつが僕の家にいたのか」
「違う。怒りを感じただけだ――あいつは心から怒っている――」
「だけど、その場所、『隠かくれ穴あな』じゃなかったか」ロンの声が大きくなった。「ほかには 何か見なかったのか あいつが誰かに呪のろいをかけていなかったか」
「違う。怒りを感じただけだ――あとはわからないんだ――」