ハリーはしつこいと感じ、頭が混乱した。その上ハーマイオニーのギョッとした声にも追おい討うちをかけられた。
「また傷痕なの いったいどうしたって言うの その結びつきはもう閉じられたと思ったのに」
「そうだよ。しばらくはね」ハリーがつぶやいた。傷痕の痛みがまだ続いていて、意識が集中できなかった。「ぼ――僕の考えでは、あいつが自制じせいできなくなるとまた開くようになったんだ。以前もそうだったし――」
「だけど、それなら、あなた、心を閉じなければ」ハーマイオニーが金切かなきり声ごえになった。「ハリー、ダンブルドアは、あなたがその結びつきを使うことを望まなかったわ。あなたに、それを閉じてほしかったのよ。『閉へい心しん術じゅつ』を使うのはそのためだったの でないと、ヴォルデモートは、あなたに嘘うそのイメージを植えつけることができるのよ。覚えて――」
「ああ、覚えてるよ。わざわざどうも」ハリーは歯を食いしばった。ハーマイオニーに言われるまでもない。ヴォルデモートが、まさにこのとおりの二人の間の結びつきを利用して、かつてハリーを罠わなにかけたことも、その結果シリウスが死んだことも覚えている。ハリーは、自分が見たことや感じたことを、二人に言わなければよかったと思った。話題にすることで、まるでヴォルデモートがこの部屋の窓に張りついているかのように、その脅威きょういがより身近なものに感じられた。しかし傷きず痕あとの痛みはますます激はげしくなり、ハリーは、吐はきたい衝動しょうどうを堪こらえるような思いで痛みと闘たたかった。
ハリーは、壁かべに掛かかったブラック家の家か系けい図ずの古いタペストリーを見るふりをして、ロンとハーマイオニーに背を向けた。そのときハーマイオニーが鋭するどい悲鳴ひめいを上げた。ハリーは再び杖つえを抜いて振ふり返った。すると、ちょうど客間の窓を通り抜けて、銀色の守しゅ護ご霊れいが飛び込んでくるのが目に入った。三人の前で着地し、イタチの姿になった守護霊は、ロンの父親の声で話し出した。
「家族は無事。返事をよこすな。我々は見張られている」
守護霊は雲うん散さん霧消むしょうした。ロンは、悲鳴ともうめきともつかない音を出し、ソファに座り込んだ。ハーマイオニーも座ってロンの腕をしっかりつかんだ。
「みんな無事なの。みんな無事なのよ」ハーマイオニーが囁ささやくと、ロンは半分笑いながらハーマイオニーを抱きしめた。
「ハリー」ロンが、ハーマイオニーの肩越しに言った。「僕――」
「いいんだよ」ハリーは頭痛で吐きそうになりながら言った。「君の家族じゃないか。心配して当然だ。僕だってきっと君と同じ気持になると思う」ハリーはジニーを思った。「僕だって、ほんとに君と同じ気持だよ」
傷痕の痛みは最高に達し、「隠かくれ穴あな」の庭で感じたと同じ、焼けるような痛みだった。微かすかにハーマイオニーの声が聞こえた。
「私、一人になりたくないわ。持ってきた寝袋ねぶくろで、今夜はここで一緒いっしょに寝てもいいかしら」
ロンの承諾しょうだくする声が聞こえた。ハリーはこれ以上痛みに耐たえられなくなり、ついに降こう参さんした。
「ハリー」ロンが、ハーマイオニーの肩越しに言った。「僕――」
「いいんだよ」ハリーは頭痛で吐きそうになりながら言った。「君の家族じゃないか。心配して当然だ。僕だってきっと君と同じ気持になると思う」ハリーはジニーを思った。「僕だって、ほんとに君と同じ気持だよ」
傷痕の痛みは最高に達し、「隠かくれ穴あな」の庭で感じたと同じ、焼けるような痛みだった。微かすかにハーマイオニーの声が聞こえた。
「私、一人になりたくないわ。持ってきた寝袋ねぶくろで、今夜はここで一緒いっしょに寝てもいいかしら」
ロンの承諾しょうだくする声が聞こえた。ハリーはこれ以上痛みに耐たえられなくなり、ついに降こう参さんした。