最後に床に這いつくばって、整理せいり箪笥だんすの下に羊よう皮ひ紙しの切きれ端はしのような物を見つけた。引っ張り出してみると、それは一部が欠けてはいたが、リリーの手紙に書いてあった写真だった。黒い髪かみの男の子が、小さな箒ほうきに乗って大声で笑いながら写真から出たり入ったりしている。追いかけている二本の足は、ジェームズのものに違いない。ハリーは写真をリリーの手紙と一緒いっしょにポケットに入れ、また手紙の二枚目を捜さがしにかかった。
しかし十五分も捜すと、母親の手紙の続きはなくなってしまったと考えざるをえなくなった。書かれてから十六年も経たっているので、その間になくなったのか、それともこの部屋を家や捜さがしした誰かに持ち去られてしまったのか ハリーは一枚目をもう一度読んだ。こんどは、二枚目に重要なことが書かれていたのならそれは何か、そのヒントを探しながら読んだ。おもちゃの箒が死し喰くい人びとにとって関心があるとは、とうてい考えられない……唯ゆい一いつ役に立つかもしれないと思われるのは、ダンブルドアに関する情報じょうほうの可能性だ。信じられないのよ、ダンブルドアが――何だろう
「ハリー ハリー ハリー」
「ここだよ」ハリーが声を張り上げた。「どうかしたの」
ドアの外でバタバタと足音がして、ハーマイオニーが飛び込んできた。
「目が覚めたら、あなたがいなくなってたんですもの」
ハーマイオニーは息を切らしながら言った。
「ロン 見つけたわ」ハーマイオニーが振ふり返って叫さけんだ。
ロンのいらだった声が、数階下のどこか遠くから響ひびいてきた。
「よかった バカヤロって言っといてくれ」
「ハリー、黙だまって消えたりしないで、お願いよ。私たちどんなに心配したか でも、どうしてこんなところに来たの」
さんざん引っかき回された部屋をぐるりと眺ながめて、ハーマイオニーが言った。
「ここで何してたの」
「これ、見つけたんだ」
ハリーは、母親の手紙を差し出した。ハーマイオニーが手に取って読む間、ハリーはそれを見つめていた。読み終えると、ハーマイオニーはハリーを見上げた。
「ああ、ハリー……」
「それから、これもあった」
ハリーは破やぶれた写真を渡した。ハーマイオニーは、おもちゃの箒に乗った赤ん坊が、写真から出たり入ったりしているのを見て微笑ほほえんだ。
「僕、手紙の続きを探してたんだ」ハリーが言った。「でも、ここにはない」