「シリウスの弟ね」ハーマイオニーが囁ささやくように言った。
「死し喰くい人びとだった」ハリーが言った。「シリウスが教えてくれた。弟はまだとても若いときに参加して、それから怖気おじけづいて抜けようとした――それで連中に殺されたんだ」
「それでぴったり合うわ」ハーマイオニーがもう一度息を呑のんだ。「この人が死喰い人だったのなら、ヴォルデモートに近づけたし、失望したのなら、ヴォルデモートを倒したいと思ったでしょう」
ハーマイオニーはハリーの腕を離はなし、階段の手すりから身を乗り出して叫さけんだ。
「ロン ロン こっちに来て。早く」
ロンはすぐさま息せき切って現れた。杖つえを構かまえている。
「どうした またおっきなクモだって言うなら、その前に朝食を食べさせてもらうぞ。それから――」
ロンは、ハーマイオニーが黙って指差したレギュラスのドアの掲示を、しかめ面で見た。
「なに シリウスの弟だろ レギュラス・アークタルス……レギュラス……・・ ロケットだ――もしかしたら――」
「探してみよう」ハリーが言った。
ドアを押したが、鍵かぎが掛かかっている。ハーマイオニーが、杖をドアの取っ手に向けて唱となえた。
「アロホモーラ」カチリと音がして、ドアがパッと開いた。
三人は一いっ緒しょに敷居しきいを跨またぎ、目を凝こらして中を見回した。レギュラスの部屋はシリウスのよりやや小さかったが、同じようにかつての豪華ごうかさを思わせた。シリウスは他の家族とは違うことを誇こ示じしようとしたが、レギュラスはその逆を強調しようとしていた。スリザリンのエメラルドと銀色が、ベッドカバー、壁かべ、窓と、至るところに見られた。ベッドの上には、ブラック家の家紋かもんが、「純血じゅんけつよ 永遠なれ」の家訓かくんとともに念入りに描かれている。その下にはセピア色になった一連の新聞の切り抜きが、コラージュ風にギザギザに貼はりつけてあった。ハーマイオニーは、そばまで行ってよく見た。
「全部ヴォルデモートに関するものだわ」ハーマイオニーが言った。「レギュラスは、死喰い人になる前の数年間、ファンだったみたいね……」
ハーマイオニーが切り抜きを読むのにベッドに腰掛こしかけると、ベッドカバーから埃ほこりが小さく舞い上がった。一方ハリーは、別の写真に気がついた。ホグワーツのクィディッチ・チームが額がくの中から笑いかけ、手を振ふっている。近くに寄って見ると、胸に蛇へびの紋章もんしょうが描かれている。スリザリンだ。レギュラスはすぐに見分けがついた。前列の真ん中に腰を下ろしている少年だ。シリウスと同じく黒い髪かみで少し高こう慢まんちきな顔だが、背は兄より少し低くやや華きゃ奢しゃで、往時おうじのシリウスほどハンサムではない。