「シーカーだったんだ」ハリーが言った。
「なあに」ヴォルデモートの切り抜きをずっと読み耽ふけっていたハーマイオニーは、曖あい昧まいな返事をした。
「前列の真ん中に座っている。ここはシーカーの場所だ……別にいいけど」
誰も聞いていないのに気づいて、ハリーが言った。ロンは這はいつくばって、洋よう箪だん笥すの下を探していた。ハリーは部屋を見回して隠し場所になりそうなところを捜さがし、机に近づいた。ここもまた、誰かがすでに探し回っていた。引き出しの中も、つい最近誰かに引っかき回され、埃ほこりさえもかき乱されていたが、目ぼしい物は何もなかった。古い羽は根ねペン、手荒に扱われた跡あとが見える古い教科書、最近割られたばかりのインク壷つぼなどで、引き出しの中身は、こぼれたインクでまだベトベトしている。
「簡単な方法があるわ」
ハリーがインクのついた指をジーンズに擦こすりつけていると、ハーマイオニーが言った。そして杖つえを上げて唱となえた。
「アクシオ ロケットよ、来い」
何事も起こらない。色褪いろあせたカーテンの襞ひだを探っていたロンは、がっかりした顔をした。
「それじゃ、これでおしまいか ここにはないのか」
「いいえ、まだここにあるかもしれないわ。でも、呪じゅ文もん避よけをかけられて――」ハーマイオニーが言った。「ほら、魔法で呼び寄せられないようにする呪文よ」
「ヴォルデモートが、洞どう窟くつの石の水すい盆ぼんにかけた呪文のようなものだね」
ハリーは、偽にせのロケットに「呼よび寄よせ呪じゅ文もん」が効きかなかったことを思い出した。
「それじゃ、どうやって探せばいいんだ」ロンが聞いた。
「手作業で探すの」ハーマイオニーが言った。
「名案だ」ロンは呆あきれたように目をぐるぐるさせて、カーテン調べに戻った。
三人は一時間以上、隈くまなく部屋を探したが、結局、ロケットはここにはないと結論せざるをえなかった。
すでに太陽が昇り、煤すすけた踊おどり場ばの窓を通してでさえ、光が眩まぶしかった。
「でも、この家のどこかにあるかもしれないわ」
階段を下りながらハーマイオニーが、二人を奮ふるい立たせるような調子で言った。ハリーとロンが気落ちすればするほど、ハーマイオニーは決意を固くするようだった。
「レギュラスが破壊はかいできたかどうかは別にして、ヴォルデモートからは隠しておきたかったはずでしょう 私たちが前にここにいたとき、いろいろ恐ろしい物を捨てなければならなかったこと、覚えてる 誰にでもボルトを発はっ射しゃする掛け時計とか、ロンを絞め殺そうとした古いローブとか。レギュラスは、ロケットの隠し場所を守るために、そういうものを置いといたのかもしれないわ。ただ、私たち、そうとは気づかなかっただけで……あ……あ」