「クリーチャー、君に頼みたいことがあるんだ」
ハリーはハーマイオニーをちらりと見て助けを求めた。親切に命令したかったが、同時に、それが命令ではないような言い方はできなかった。しかし、口調が変わったことで、ハーマイオニーにも受け入れてもらえたらしく、ハーマイオニーはその調子よ、と微笑ほほえんだ。
「クリーチャー、お願いだから、マンダンガス・フレッチャーを探してきてくれないか。僕たち、ロケットがどこにあるか、見つけないといけない――レギュラス様のロケットのある場所だよ。とても大切なことなんだ――レギュラス様のやりかけた仕事を、僕たちがやり終えたいんだ。僕たちは――えーと――レギュラス様の死がむだにならないようにしたいんだ」
クリーチャーは拳をパタッと下ろし、ハリーを見上げた。
「マンダンガス・フレッチャーを見つける」しゃがれ声が言った。
「そしてあいつをここへ、グリモールド・プレイスへ連れてきてくれ」ハリーが言った。「僕たちのために、やってくれるかい」
クリーチャーは、うなずいて立ち上がった。ハリーは突然閃ひらめいた。ハグリッドにもらった巾着きんちゃくを引っ張り出し、偽にせの分ぶん霊れい箱ばこを取り出した。レギュラスがヴォルデモートへのメモを入れた、すり替かえ用のロケットだ。
「クリーチャー、僕、あの、君にこれを受け取ってほしいんだ」ハリーはロケットをしもべ妖精の手に押しつけた。「これはレギュラスのものだった。あの人はきっと、これを君にあげたいと思うだろう。君がしたことへの感謝の証あかしに――」
「おい、ちょっとやりすぎだぜ」ロンが言った。しもべ妖よう精せいはロケットを一目見るなり、衝しょう撃げきと悲しみで大声を上げ、またもや床に突つっ伏ぷした。
クリーチャーをなだめるのに、優ゆうに半時間はかかった。ブラック家の家宝を自分のものとして贈られ、感かん激げきに打ちのめされたクリーチャーは、きちんと立ち上がれないほど膝ひざが抜けてしまっていた。やっとのことで、二、三歩ふらふらと歩けるようになったとき、三人とも納戸なんどまで付き添い、クリーチャーが汚きたならしい毛布にロケットを後ご生しょう大だい事じに包み込むのを見守った。それから、クリーチャーの留守中は、ロケットを守ることを三人の最さい優先ゆうせん事項じこうにすると固く約束した。そしてクリーチャーは、ハリーとロンにそれぞれ深々とお辞じ儀ぎし、なんとハーマイオニーに向かっても小さくおかしな痙けい攣れんをした。恭うやうやしく敬礼しようとしたのかもしれなかった。そのあとでクリーチャーは、いつものようにバチンと大きな音を立てて「姿すがたくらまし」した。