亡もう者じゃがうようよしている湖から逃げられたくらいだから、マンダンガスを捕まえることなどクリーチャーには数時間もあれば十分だろうと、ハリーは確信していた。期待感をつのらせて、ハリーは午前中ずっと家の中をうろうろしていた。しかしクリーチャーは、その日の午前中にも午後になってからも戻らなかった。日も暮れるころになると、ハリーはがっかりするとともに心配になってきた。夕食も、ほとんど黴かび臭くさいパンばかりで、ハーマイオニーがさまざまな変身術をかけてはみたもののどれもうまくいかず、ハリーは落ち込むばかりだった。
クリーチャーは次の日も、その次の日も帰らなかった。その一方、マント姿の二人の男が十二番地の外の広場に現れ、見えないはずの屋敷やしきの方向をじっと見たまま、夜になっても動かなかった。
「死し喰くい人びとだな、間違いない」
ハリーやハーマイオニーと一いっ緒しょに、客間の窓から覗のぞいていたロンが言った。
「僕たちがここにいるって、知ってるんじゃないか」
「そうじゃないと思うわ」
ハーマイオニーは、そう言いながらも怯おびえた顔だった。
「もしそうなら、スネイプを差し向けて私たちを追わせたはずよ。そうでしょう」
「あのさ、スネイプはここに来て、マッド‐アイの呪のろいで舌した縛しばりになったと思うか」
ロンが聞いた。
「ええ」
ハーマイオニーが言った。
「そうじゃなかったら、スネイプはここへの入り方を、連中に教えることができたはずでしょう でもたぶん、あの人たちは、私たちが現れやしないかと見張っているんだわ。だって、ハリーがこの屋敷の所有者だと知っているんですもの」
「どうしてそんなことを――」ハリーが聞きかけた。
「魔法使いの遺ゆい言ごん書しょは、魔ま法ほう省しょうが調べるということ。覚えてるでしょう シリウスがあなたにこの場所を遺のこしたことは、わかるはずよ」
死喰い人が外にいるという事実が、十二番地の中の雰ふん囲い気きをますます陰気いんきにしていた。ウィーズリーおじさんの守しゅ護ご霊れいのほかは、グリモールド・プレイスの外から何の連れん絡らくも入ってきていないことも加わって、ストレスがだんだん表に顔を出してきた。落ち着かないいらいら感から、ロンはポケットの中で「灯ひ消けしライター」をもてあそぶという、困った癖くせがついてしまった。これには、とくにハーマイオニーが腹を立てた。クリーチャーを待つ間、ハーマイオニーは「吟ぎん遊ゆう詩し人じんビードルの物語ものがたり」を調べていたので、灯あかりが点ついたり消えたりするのが気に入らなかったのだ。