「姿を見せろ」ハリーは大声で言い返した。
ルーピンが降こう伏ふくの証しるしに両手を高く挙あげたまま、明るみに進み出た。
「私はリーマス・ジョン・ルーピン、狼おおかみ人にん間げんで、ときにはムーニーと呼ばれる。『忍しのびの地ち図ず』を製作した四人の一人だ。通常トンクスと呼ばれる、ニンファドーラと結婚した。君に『守しゅ護ご霊れい』の術を教えたが、ハリー、それは牡鹿おじかの形を取る」
「ああ、それでいいです」
ハリーが杖つえを下ろしながら言った。
「でも、確かめるべきだったでしょう」
「『闇やみの魔術まじゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』の元教師としては、確かめるべきだという君の意見に賛成だ。ロン、ハーマイオニー、君たちは、あんなに早く警けい戒かいを解といてはいけないよ」
三人は階段を駆かけ下りた。厚い黒の旅行用マントを着たルーピンは、疲れた様子だったが、三人を見てうれしそうな顔をした。
「それじゃ、セブルスの来る気配はないのかい」ルーピンが聞いた。
「ないです」ハリーが答えた。「どうなっているの みんな大丈夫なの」
「ああ」ルーピンが言った。「しかし、我々は全員見張られている。外の広場に、死し喰くい人びとが二人いるし――」
「――知ってます――」
「――私は連中に見られないように、玄げん関かんの外階段のいちばん上に正確に『姿すがた現わし』しなければならなかった。連中は、君たちがここにいるとは気づいていない。知っていたら、外にもっと人を置くはずだ。ハリー、やつらは、君と関係のあったところはすべて見張っている。さあ、下に行こう。君たちに話したいことがたくさんあるし、それに君たちが『隠かくれ穴あな』からいなくなったあとで何があったのかを知りたい」
四人は厨房ちゅうぼうに下り、ハーマイオニーが杖を火ひ格ごう子しに向けた。たちまち燃え上がった火が、素そっ気けない石の壁かべをいかにも心地よさそうに見せ、木製の長いテーブルを輝かがやかせた。ルーピンが旅行用マントからバタービールを取り出し、みんなでテーブルを囲んだ。
「ここには三日前に来られるはずだったのだが、死喰い人の追つい跡せきを振ふり切らなければならなくてね」
ルーピンが言った。
「それで、君たちは結婚式のあと、まっすぐにここに来たのかね」
「いいえ」ハリーが言った。「トテナム・コート通りのカフェで、二人の死喰い人と出くわして、そのあとです」
「何だって」
ルーピンは、バタービールをほとんどこぼしてしまった。
三人から事ことの次第を聞き終えたルーピンは、一大事だという顔をした。