「ハリー、同情する」ルーピンが言った。
「それじゃ、死喰い人は『日刊予言者』も乗っ取ったの」
ハーマイオニーはかんかんになった。
ルーピンがうなずいた。
「だけど、何事が起こっているか、みんなにわからないはずはないわよね」
「クーデターは円えん滑かつで、事実上沈ちん黙もくのうちに行われた」ルーピンが言った。「スクリムジョールの殺さつ害がいは、公式には辞任じにんとされている。後任はパイアス・シックネスで、『服従ふくじゅうの呪じゅ文もん』にかけられている」
「ヴォルデモートはどうして、自分が魔法大臣だと宣せん言げんしなかったの」ロンが聞いた。
ルーピンが笑った。
「ロン、宣言する必要はない。事実上やつが大臣なんだ。しかし、何も魔ま法ほう省しょうで執務しつむする必要はないだろう 傀かい儡らいのシックネスが日常の仕事をこなしていれば、ヴォルデモートは身軽に、魔法省を超こえたところで勢力を拡大できる」
「もちろん、多くの者が、何が起きたのかを推すい測そくした。この数日の間に、魔法省の政せい策さくが百八十度転てん換かんしたのだから、ヴォルデモートが裏うらで糸を引いているに違いないと囁ささやく者は多い。しかし、囁いている、というところが肝かん心じんなのだ。誰を信じてよいかわからないのに、互いに本心を語り合う勇気はない。もし自分の疑念ぎねんが当たっていたら、自分の家族が狙ねらわれるかもしれないと恐れて、おおっぴらには発言しない。そうなんだ。ヴォルデモートは非常にうまい手を使っている。大臣宣言をすれば、あからさまな反乱を誘ゆう発はつしていたかもしれない。黒くろ幕まくにとどまることで、混乱や不安や恐れを引き起こしたのだ」
「それで、魔法省の政策の大転換というのは」ハリーが口を挟はさんだ。「魔法界に対して、ヴォルデモートではなく、僕を警けい戒かいするようにということなんですか」
「もちろんそれもある」
ルーピンが言った。
「それに、それが政策の見事なところだ。ダンブルドアが死んだいま、君が――生き残った男の子が――ヴォルデモートへの抵てい抗こう勢力の象しょう徴ちょう的てき存在となり、扇せん動どうの中心になることは間違いない。しかし、君が昔の英雄の死にかかわったと示し唆さすることで、君の首に懸けん賞しょう金きんをかけたばかりでなく、君を擁護ようごする可能性のあったたくさんの魔法使いの間に、疑いと恐れの種を撒まいたことになる」
「一方、魔法省は、反マグル生まれの動きを始めた」