ハーマイオニーが薄うす紫むらさきのきれいな色になったポリジュース薬を飲むと、数秒後にはマファルダ・ホップカークと瓜うり二ふたつの姿が、二人の前に現れた。ハーマイオニーがマファルダから外はずしたメガネを掛けているときに、ハリーが時計を見ながら言った。
「僕たち、予定より遅れているよ。魔法ビル管理部さんがもう到着する」
三人は本物のマファルダを閉じ込めて、急いで扉を閉めた。ハリーとロンは「透明マント」を被ったが、ハーマイオニーはそのままの姿で待った。まもなく、またポンと音がして、ケナガイタチのような顔の、背の低い魔法使いが現れた。
「おや、おはよう、マファルダ」
「おはよう」ハーマイオニーは年寄りの震ふるえ声ごえで挨あい拶さつした。「お元気」
「いや、実はあんまり」小さい魔法使いがしょげきって答えた。
ハーマイオニーとその魔法使いとが表通りに向かって歩き出し、ハリーとロンはその後ろをこっそり追ついていった。
「気分が優すぐれないのは、よくないわ」
ハーマイオニーは、その魔法使いが問題を説明しようとするのを遮さえぎって、きっぱりと言った。表通りに出るのを阻そ止しすることが大事なのだ。
「さあ、甘いものでもなめて」
「え ああ、遠えん慮りょするよ――」
「いいからなめなさい」
ハーマイオニーは、その魔法使いの目の前でトローチの袋を振ふりながら、有無を言わさぬ口調で言った。小さい魔法使いは度肝どぎもを抜かれたような顔で、一つ口に入れた。
効果てきめん。トローチが舌に触ふれた瞬間しゅんかん、小さい魔法使いは激はげしくゲーゲーやり出し、ハーマイオニーが頭のてっぺんから髪かみの毛を一つかみ引き抜いたのにも、気がつかないほどだった。
「あらまぁ」
魔法使いが路地に吐はくのを見ながら、ハーマイオニーが言った。
「今日はお休みしたほうがいいわ」
「いや――いや」
息も絶たえ絶だえに吐きながら、まっすぐ歩くこともできないのに、その魔法使いはなおも先に進もうとした。
「どうしても――今日は――行かなくては――」
「バカなことを」ハーマイオニーは驚いて言った。「そんな状態では仕事にならないでしょう――聖せいマンゴに行って、治してもらうべきよ」
その魔法使いは、膝ひざを折り両手を地面について吐きながらも、なお表通りに行こうとした。
「そんな様子では、とても仕事にはいけないわ」ハーマイオニーが叫さけんだ。
管理部の魔法使いも、とうとうハーマイオニーの言うことが正しいと受け止めたようだった。触さわりたくないという感じのハーマイオニーにすがりついて、ようやく立ち上がった魔法使いは、その場で回転して姿を消した。あとに残ったのは、姿を消すときにその手からロンが素早く奪うばった鞄かばんと、宙ちゅうを飛ぶ反へ吐どだけだった。