「私は――私は――」ロンが口ごもった。
「しかし、万が一俺の女房にょうぼが『穢けがれた血ち』だと告こく発はつされるようなことがあれば」ヤックスリーが言った。「――俺が結婚した女は、誰であれ、そういう汚物おぶつと間違えられることがあるはずはないが――そういうときに魔ま法ほう法ほう執しっ行こう部ぶの部長に仕事を言いつけられたら、カターモール、俺ならその仕事を優ゆう先せんする。わかったか」
「はい」ロンが小声で言った。
「それなら対たい処しょしろ、カターモール。一時間以内に俺おれの部屋が完全に乾かわいていなかったら、おまえの女房にょうぼの『血けっ統とう書しょ』は、いまよりもっと深しん刻こくな疑いをかけられることになるぞ」
ハリーたちの前の格子こうしが開いた。ヤックスリーはハリーに向かって軽くうなずき、にたりといやな笑いを見せて、さっと別なエレベーターのほうに行ってしまった。ハリーが成りすましているランコーンという魔法使いは、カターモールがこういう仕打ちを受けるのを喜ぶべき立場にあることが明らかだった。ハリー、ロン、ハーマイオニーは目の前のエレベーターに乗り込んだが、誰も一いっ緒しょに乗ろうとはしない。何かに感かん染せんすると思っているかのようだった。格子がガチャンと閉まり、エレベーターが上りはじめた。
「僕、どうしよう」
ロンがすぐさま二人に聞いた。衝撃しょうげきを受けた顔だ。
「僕が行かなかったら、僕の妻は――つまりカターモールの奥さんは――」
「僕たちも一緒に行くよ。三人は一緒にいるべきだし――」
ハリーの言葉を、ロンが激はげしく首を振ふって遮さえぎった。
「とんでもないよ。あんまり時間がないんだから、二人はアンブリッジを探してくれ。僕はヤックスリーの部屋に行って処理しょりする――だけど、どうやって雨降あめふりを止めりゃいいんだ」
「『フィニート インカンターテム 呪じゅ文もんよ終われ』を試してみて」ハーマイオニーが即座そくざに答えた。「呪のろいとか呪詛じゅそで降っているのだったら、それで雨はやむはずよ。やまなかったら、『大気たいき呪じゅ文もん』がおかしくなっているわね。その場合は直すのがもっと難しいから、とりあえずの処置しょちとして、あの人の所有物を保ほ護ごするために『防ぼう水すい呪じゅ文もん』を試して――」
「もう一回ゆっくり言って――」
ロンは、羽は根ねペンを取ろうと必死にポケットを探ったが、そのときエレベーターがガタンと停止ていしして、声だけの案あん内ない嬢じょうが告げた。「四階。魔ま法ほう生物せいぶつ規制きせい管理かんり部ぶでございます。動物課、存在課、霊れい魂こん課か、小ゴブ鬼リン連れん絡らく室しつ、害虫相談室はこちらでお降おりください」格子が開き、魔法使いが二人と、薄うす紫むらさきの紙飛行機が数機一緒に入ってきて、エレベーターの天井のランプの周りをパタパタと飛び回った。