「おはよう、アルバート」
頬ほおひげのモジャモジャした男が、ハリーに笑いかけた。エレベーターが軋きしみながらまた上りはじめたとき、その男はロンとハーマイオニーをちらりと見た。ハーマイオニーは、小声で、必死になってロンに教え込んでいた。ひげもじゃ男はハリーのほうに上体を傾け、にやりと笑ってこっそり言った。
「ダーク・クレスウェルか、え 小鬼ゴブリン連絡室の やるじゃないか、アルバート。こんどは、私がその地位に就つくこと間違いなし」
男はウィンクし、ハリーは、それだけで十分でありますようにと願いながら、笑顔を返した。エレベーターが止まり、格子がまた開いた。
「二階。魔ま法ほう法ほう執しっ行こう部ぶでございます。魔ま法ほう不ふ適正てきせい使用しよう取とり締しまり局きょく、闇やみ祓ばらい本部ほんぶ、ウィゼンガモット最さい高こう裁さい事じ務む局きょくはこちらでお降おりください」声だけの案あん内ない嬢じょうが告げた。
ハーマイオニーが、ロンをちょっと押すのがハリーの目に入った。ロンは急いでエレベーターを降り、二人の魔法使いもそのあとから降りたので、中にはハリーとハーマイオニーだけになった。格子こうしが閉まるや否いなや、ハーマイオニーが早口で言った。
「ねえ、ハリー、私やっぱり、ロンのあとを追ったほうがいいと思うわ。あの人、どうすればいいのかわかってないと思うし、もしロンが捕まったらすべて――」
「一階でございます。魔法大臣ならびに次官室がございます」
金の格子が開いたとたん、ハーマイオニーが息を呑のんだ。格子の向こうに、立っている四人の姿があった。そのうちの二人は、何やら話し込んでいる。一人は黒と金色の豪華ごうかなローブを着た髪かみの長い魔法使い、もう一人は、クリップボードを胸元にしっかり抱え、短い髪かみにビロードのリボンを着けた、ガマガエルのような顔のずんぐりした魔女だった。