二体の守護霊が地ち下か牢ろうからスーッと飛び出すと、外で待っていた人々が驚いて叫さけび声を上げた。ハリーは周囲を見回した。吸きゅう魂こん鬼きはハリーたちの両側で退却して闇やみに溶とけ、銀色の霊れいたちの前に散り散りになって消えた。
「みんな家に戻り、家族とともに隠れるようにと決定された」
ハリーは、外で待っていた「マグル生まれ」たちに告げた。守護霊の光を眩まぶしげに見ながら、みんなまだ縮こまっている。
「できればこの国から出るんだ。とにかく魔ま法ほう省しょうからできるだけ離はなれること。それが――えーと――省の新しい立場だ。さあ、守護霊たちに従ついて行けば、アトリウムから外に出られる」
石段を上がるまでは、なんとか邪魔じゃまされることもなく移動したが、エレベーターに近づくと、ハリーは心配になりはじめた。銀の牡鹿とカワウソを脇わきに従え、二十人もの人を連れていて、そのうちの半数は「マグル生まれ」として訴えられているとなれば、いやでも人目につくと考えないわけにはいかない。ハリーがそういうありがたくない結論に達したとき、エレベーターが目の前にガチャガチャと停止ていしした。
「レッジ」
カターモール夫人が叫さけび声を上げて、ロンの腕の中に飛び込んだ。
「ランコーンが逃がしてくれたの。アンブリッジとヤックスリーを襲おそって。そして、私たち全員が国外に出るべきだって、そう言うの。レッジ、そうしたほうがいいわ。ほんとにそう思うの。急いで家に帰りましょう。そして子どもたちを連れて、そして――あなた、どうしてこんなに濡ぬれているの」
「水」
ロンは抱きついている夫人を離はなしながらつぶやいた。
「ハリー、連中は、魔法省に侵しん入にゅう者しゃがいるって気づいたぜ。アンブリッジの部屋の扉の穴がどうとか。たぶん、あと五分しかない。それもないかも――」
カワウソの守護霊がポンと消え、ハーマイオニーは恐怖に引きつった顔をハリーに向けた。
「ハリー、ここに閉じ込められてしまったら――」
「素早く行動すれば、そうはならない」ハリーが言った。
ハリーは、黙々もくもくと後ろに従ついてきていた人々に話しかけた。みんな呆ぼう然ぜんとハリーを見つめていた。
「杖つえを持っている者は」
約半数が手を上げた。
「よし。杖を持っていない者は、誰か持っている者に従ついていること。迅じん速そくに行動するんだ――連中に止められる前に。さあ、行こう」
全員がなんとか二台に分乗できた。エレベーターの金の格子こうしが閉まり、上りはじめるまで、ハリーの守しゅ護ご霊れいがその前で歩哨ほしょうに立った。
「八階」落ち着いた魔女の声が流れた。「アトリウムでございます」
困ったことになったと、ハリーはすぐに気づいた。アトリウムでは大勢の人が、暖炉だんろを次々と閉鎖へいさする作業に動き回っていた。