「ハリー」ハーマイオニーが金切かなきり声ごえを上げた。「どうしましょう――」
「やめろ」
ハリーはランコーンの太い声を轟とどろかせた。声はアトリウム中に響ひびき、暖炉閉鎖をしていた魔法使いたちはその場に凍こおりついた。
「従ついてくるんだ」
ハリーは怯おびえきったマグル生まれの集団に向かって囁ささやいた。ロンとハーマイオニーに導かれ、みんなが塊かたまって移動した。
「どうしたんだ、アルバート」
ハリーが暖炉からアトリウムに出てきたときに、すぐあとから出てきた、あの頭の禿はげかかった魔法使いだった。神経を尖とがらせているようだ。
「この連中は、出口が閉鎖される前に出ていかねばならんのだ」
ハリーはできるかぎり重々しく言った。ハリーの目の前にいる魔法使いたちは、顔を見合わせた。
「命令では、すべての出口を閉鎖して、誰も出さないようにと――」
「俺おれの言うことがきけんのか」ハリーはこけ威おどしに怒ど鳴なりつけた。「おまえの家か系けい図ずを調べさせてやろうか 俺おれがダーク・クレスウェルにしてやったように」
「すまん」
禿げかけの魔法使いは息を呑のんで後あと退ずさりした。
「そんなつもりじゃない、アルバート、ただ、私はこの連中が……この連中が尋じん問もんのために来たと思ったんで、それで……」
「この者たちは純血じゅんけつだ」
ハリーの低音はホール中に重々しく響いた。
「あえて言うが、おまえたちの多くより純血だぞ。さあ、行け」ハリーは大声で言った。
マグル生まれたちはあわてて暖炉だんろの前に進み、二人ずつ組んで姿を消した。魔ま法ほう省しょうの職員たちは、困こん惑わくした顔やら怯おびえた顔、恨うらめしげな顔をして、遠巻きに見ていた。そのとき――。
「メアリー」
カターモール夫人が振ふり返った。本物のレッジ・カターモールが、もう吐はいてはいなかったがげっそりした青い顔で、エレベーターから降おりて走ってくるところだった。
「レ――レッジ」
夫人は、夫とロンを交互に見た。ロンは大声で事態じたいを罵ののしった。
禿はげかけの魔法使いは口をあんぐり開け、夫人は二人のレッジ・カターモールの間で、滑こっ稽けいな首振り人形になっていた。
「おいおい――どうしたっていうんだ こりゃ何だ」
「出口を閉鎖へいさしろ 閉鎖しろ」
ヤックスリーがもう一台のエレベーターから飛び出し、暖炉の脇わきにいる職員たちに向かって走ってくるところだった。マグル生まれは、カターモール夫人を除のぞいて全員、すでに暖炉に消えていた。禿げかけの魔法使いが杖つえを上げたが、ハリーが巨大な拳こぶしを振ふり上げてパンチを食らわせ、その魔法使いをぶっ飛ばした。
「ヤックスリー、こいつはマグル生まれの逃亡に手を貸していたんだ」ハリーが叫さけんだ。