傷痕きずあとがまた痛み出した。そんなふうに考えることが、この痛みを自みずから招く結果になっているのではないかと不安になり、ハリーは別なことを考えようとした。哀あわれなクリーチャー。三人の帰りを待っていたのに、代わりにヤックスリーを迎えなければならなくなった。しもべ妖精ようせいは沈黙ちんもくを守るだろうか、それとも死し喰くい人びとに知っていることを全部話してしまうだろうか。ハリーは、この一か月の間に、クリーチャーの自分に対する態度は変わったと信じたかった。いまは、ハリーに忠誠ちゅうせいを尽つくすだろうと信じたかった。しかし何が起こるかわからない。死喰い人がしもべ妖精を拷問ごうもんしたら いやなイメージが頭に浮かび、ハリーはこれも押し退けようとした。
クリーチャーのために、自分は何もしてやれない。ハーマイオニーもハリーも、クリーチャーを呼び寄せないことに決めていた。魔ま法ほう省しょうから誰か一緒いっしょに従ついてきたらどうなる ハーマイオニーの袖口そでぐちをつかんだヤックスリーを、グリモールド・プレイスに連れてきてしまったと同じような欠陥けっかんが、しもべ妖よう精せいの「姿すがた現わし」には絶対にないとは言いきれまい。
傷痕きずあとは、いまや焼けるようだった。自分たちの知らないことがなんと多いことか、とハリーは思った。ルーピンが言ったことは正しかった。いままで出会ったことも、想像したこともない魔法がある。ダンブルドアは、どうしてもっと教えてくれなかったのか まだまだ時間があると思ったのだろうか。この先何年も、もしかしたら友人のニコラス・フラメルのように、何百年も生きると思っていたのだろうか そうだとしたら、ダンブルドアは間違っていた……スネイプのせいで……スネイプのやつ、眠れる蛇へびめ、あいつがあの塔とうの上で撃うったんだ……。
そしてダンブルドアは落ちていった……落ちて……。