結局三人は、人里離はなれてぽつんと建つ農家の畑で、一夜を明かすことになった。そしてやっと、農家から卵とパンを手に入れた。
「これって、盗みじゃないわよね」
三人でスクランブルエッグを載のせたトーストを貪むさぼるように頬張ほおばりながら、ハーマイオニーが気遣きづかわしげに言った。
「鶏とり小ご屋やに、少しお金を置いてきたんだもの」
ロンは目をぐるぐるさせ、両頬を膨ふくらませて言った。
「アー‐ミー‐ニー、くみ しんぽい しすぎ。イラックス」
事実、心地よく腹が満たされると、リラックスしやすくなった。その夜は、吸魂鬼についての言い争いが、笑いのうちに忘れ去られた。三交代の夜警やけいの、最初の見張りに立ったハリーは、陽気なばかりか希望に満ちた気分にさえなっていた。
満たされた胃は意気を高め、空からっぽの胃は言い争いと憂ゆう鬱うつをもたらす。三人は、この事実に初めて出会った。ハリーにとって、これは、あまり驚くべき発見ではなかった。ダーズリー家で、餓が死し寸すん前ぜんの時期を経験していたからだ。ハーマイオニーも、ベリーや黴かび臭くさいビスケットしかなかったこれまでの何日かを、かなりよく耐たえてきた。いつもより少し短気になったり、気難しい顔で黙だまりこくることが多くなっただけだった。ところが、これまで母親やホグワーツの屋敷やしきしもべ妖よう精せいのおかげで、三度三度おいしい食事をしていたロンは、空腹だとわがままになり、怒りっぽくなった。食べ物のないときと分霊箱を持つ順番とが重なると、ロンは思いっきりいやなやつになった。
「それで、次はどこ」
ロンは口くち癖ぐせのように繰くり返して聞いた。自分自身には何の考えもなく、そのくせ自分が食料の少なさをくよくよ悩なやんでいる間に、ハリーとハーマイオニーが計画を立ててくれると期待していた。結局、ハリーとハーマイオニーの二人だけが、どこに行けば他の分ぶん霊れい箱ばこが見つかるのか、どうしたらすでに手に入れた分霊箱を破壊はかいできるのかと、結論の出ない話し合いに、何時間も費やすことになった。新しい情報じょうほうがまったく入らない状況では、二人の会話は次第に堂々巡りになっていた。
ダンブルドアがハリーに、分霊箱の隠し所は、ヴォルデモートにとって重要な場所に違いないと教えていたこともあって、話し合いでは、ヴォルデモートが住んでいたか訪れたことがわかっている場所の名前が、うんざりするほど単調に繰くり返された。生まれ育った孤こ児じ院いん、教育を受けたホグワーツ、卒業後に勤つとめたボージン・アンド・バークスの店、何年も亡ぼう命めいしていたアルバニア、こうした場所が推すい測そくの基本線だった。