「そうだ、アルバニアに行こうぜ。国中を探し回るのに、午後半日あれば十分さ」
ロンは皮肉ひにくを込めて言った。
「そこには何にもあるはずがないの。国外に逃れる前に、すでに五つも分霊箱を作っていたんですもの。それにダンブルドアは、六つ目はあの蛇へびに違いないと考えていたのよ」
ハーマイオニーが言った。
「あの蛇が、アルバニアにいないことはわかってるわ。だいたいいつもヴォル――」
「それを言うのは、やめてくれって言っただろ」
「わかったわ 蛇はだいたいいつも『例のあの人』と一いっ緒しょにいる――これで満足」
「べつに」
「ボージン・アンド・バークスの店に、何か隠しているとは思えない」
ハリーは、もう何度もこのことを指摘してきしていたが、いやな沈ちん黙もくを破やぶるためだけに、もう一度言った。
「ボージンもバークも、闇やみの魔術まじゅつの品にかけては専せん門もん家かだから、分霊箱があればすぐに気づいたはずだ」
ロンは、わざとらしく欠伸あくびした。何か投げつけてやりたい衝動しょうどうを抑えて、ハリーは先を続けた。
「僕は、やっぱり、あいつはホグワーツに何か隠したんじゃないかと思う」
ハーマイオニーはため息をついた。
「でも、ハリー、ダンブルドアが見つけているはずじゃない」
ハリーは、自分の説を裏うらづける議論を繰り返した。
「ダンブルドアが、僕の前で言ったんだ。ホグワーツの秘密を全部知っているなどと思ったことはないって。はっきり言うけど、もし、どこか一か所、ヴォル――」
「おっと」
「『例のあの人』だよ」
我慢がまんも限界で、ハリーは大声を出した。
「もしどこか一か所、『例のあの人』にとって、本当に大切な場所があるとすれば、それはホグワーツだ」
「おい、いい加減かげんにしろよ」ロンが雑まぜっ返した。「学校がか」
「ああ、学校がだ あいつにとって、学校は初めての本当の家庭だった。自分が特別だってことを意味する場所だったし、あいつにとってのすべてだった。学校を卒業してからだって――」
「僕たちが話してるのは、『例のあの人』のことだよな 君のことじゃないだろう」
ロンが尋たずねた。首に掛かけた分ぶん霊れい箱ばこの鎖くさりを引っ張っている。ハリーはその鎖をつかんでロンの首を絞しめ上げたい衝動しょうどうに駆かられた。
「『例のあの人』が卒業後に、ダンブルドアに就しゅう職しょくを頼みにきたって話をしてくれたわね」
ハーマイオニーが言った。
「そうだよ」ハリーが言った。
「それで、あの人が戻ってきたいと思ったのは、ただ何かを見つけるためだったし、たぶん創そう設せつ者しゃゆかりの品をもう一つ見つけて分霊箱にするためだったと、ダンブルドアはそう考えたのね」
「そう」ハリーが言った。
「でも、就職はできなかった。そうね」
ハーマイオニーが言った。
「だからあの人は、そこで創設者ゆかりの品を見つけたり、それを学校に隠したりする機会はなかった」
「オッケー、それなら」ハリーは降こう参さんした。「ホグワーツはなしにしよう」