「一言も聞いていない」テッドが言った。「『予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん』には載のってなかっただろうね」
「ないだろうな」ダークがカラカラと笑った。「このグリップフックが話してくれたのだが、銀行に勤つとめているビル・ウィーズリーから、それを聞いたそうだ。剣を奪うばおうとした子どもの一人はビルの妹だった」
ハリーがちらりと目をやると、ハーマイオニーもロンも、命綱いのちづなにしがみつくようにしっかりと「伸のび耳みみ」を握にぎりしめていた。
「その子と他の二人とで、スネイプの部屋に忍び込み、剣が収められていたガラスのケースを破やぶったらしい。スネイプは、盗み出したあとで階段を下りる途中の三人を捕まえた」
「ああ、なんと大だい胆たんな」テッドが言った。「何を考えていたのだろう 『例のあの人』に対して、その剣を使えると思ったのだろうか それとも、スネイプに対して使おうとでも」
「まあ、剣をどう使おうと考えていたかは別として、スネイプは、剣をその場所に置いておくのは安全でないと考えた」ダークが言った。「それから数日後、『例のあの人』から許可をもらったからだと思うが、スネイプは、剣をグリンゴッツに預けるために、ロンドンに送った」
小鬼たちがまた笑い出した。
「何がおもしろいのか、私にはまだわからない」テッドが言った。
「贋にせ物ものだ」グリップフックが、ガサガサ声で言った。
「グリフィンドールの剣が」
「ええ、そうですとも。贋がん作さくです――よくできていますが、間違いない――魔法使いの作品です。本物は、何世紀も前に小鬼が鍛きたえたもので、ゴブリン製の刀とう剣けん類るいのみが持つある種の特とく徴ちょうを備えています。本物のグリフィンドールの剣がどこにあるやら、とにかくグリンゴッツ銀行の金庫ではありませんな」
「なるほど」テッドが言った。「それで、君たちは、死し喰くい人びとにわざわざそれを教えるつもりはない、と言うわけだね」
「それを教えてあの人たちをお煩わずらわせする理由は、まったくありませんな」
グリップフックがすましてそう言うと、こんどはテッドとディーンも、ゴルヌックとダークと一いっ緒しょになって笑った。
テントの中で、ハリーは目をつむり、誰かが自分の聞きたいことを聞いてくれますようにと祈いのっていた。まるで十分に思えるほどの長い一分が経たって、ディーンが聞いてくれた。そう言えばハリーはそのことを思い出して、胸がざわついたが、ディーンもジニーの元ボーイフレンドだった。