「その声は、もしや逃げを打ったミスター・ポッターか」
「そうかもしれない」
こう言えば、フィニアス・ナイジェラスの関心を引き止めておけると意識して、ハリーが答えた。
「二つ質問があります――グリフィンドールの剣つるぎのことで」
「ああ」
フィニアス・ナイジェラスは、ハリーの姿をなんとか見ようとして、こんどは頭をいろいろな角度に動かしながら言った。
「そうだ。あのばかな女の子は、まったくもって愚おろかしい行動を取った――」
「妹のことをごちゃごちゃ言うな」
ロンは乱暴な言い方をした。フィニアス・ナイジェラスは、人を食ったような眉まゆをピクリと上げた。
「ほかにも誰かいるのか」
フィニアスはあちこちと首を回した。
「君の口調は気に入らん あの女の子も仲間も、向こう見ずにもほどがある。校長の部屋で盗みを働くとは」
「盗んだことにはならない」ハリーが言った。「あの剣はスネイプのものじゃない」
「スネイプ教授きょうじゅの学校に属する物だ」
フィニアス・ナイジェラスが言った。
「ウィーズリー家の女の子に、いったいどんな権利があると言うのだ あの子は罰ばつを受けるに値する。それに抜ぬけ作さくのロングボトムも、変人のラブグッドもだ」
「ネビルは抜け作じゃないし、ルーナは変人じゃないわ」ハーマイオニーが言った。
「ここはどこかね」
フィニアス・ナイジェラスはまたしても目隠しと格かく闘とうしながら、同じことを聞いた。
「私をどこに連れてきたのだ なぜ私を、先祖の屋敷やしきから取り外はずした」
「それはどうでもいい スネイプは、ジニーやネビルやルーナにどんな罰を与えたんだ」
ハリーは急せき込んで聞いた。
「スネイプ教授は、三人を『禁きんじられた森もり』に送って、うすのろのハグリッドの仕事を手伝わせた」
「ハグリッドは、うすのろじゃないわ」ハーマイオニーが甲かん高だかい声を出した。
「それに、スネイプはそれが罰だと思っただろうけど」ハリーが言った。「でも、ジニーもネビルもルーナも、ハグリッドと一いっ緒しょに大笑いしただろう。『禁じられた森』なんて……それがどうした 三人とももっと大変な目に遭あっている」
ハリーはほっとした。最低でも、「磔はりつけの呪じゅ文もん」のような恐ろしい罰を想像していたのだ。
「ブラック教授。私たちが本当に知りたいのは、誰か別の人が、えーと、剣つるぎを取り出したことがあるかどうかです。たとえば磨みがくためとか――そんなことで」
目隠しを取ろうとじたばたしていたフィニアス・ナイジェラスは、また一瞬いっしゅん動きを止め、にやりと笑った。