「ロン、ロケットを外はずしてちょうだい」
ハーマイオニーの声は、いつになく上ずっていた。
「お願いだから、外して。一日中それを身につけていなかったら、そんな言い方はしないはずよ」
「いや、そんな言い方をしただろうな」
ハリーは、ロンのために言い訳などしてほしくなかった。
「僕のいないところで二人でひそひそ話をしていたことに、僕が気づかないとでも思っていたのか 君たちがそんなふうに考えていることに、気づかないとでも思ったのか」
「ハリー、私たちそんなこと――」
「嘘うそつけ」ロンがハーマイオニーを怒ど鳴なりつけた。「君だってそう言ったじゃないか。失望したって。ハリーはもう少しわけがわかってると思ったって――」
「そんな言い方はしなかったわ――ハリー、違うわ」ハーマイオニーが叫さけんだ。
雨は激はげしくテントを打ち、涙がハーマイオニーの頬ほおを流れ落ちた。ほんの数分前の興こう奮ふんは、一瞬いっしゅん燃え上がっては消えるはかない花火のように跡あと形かたもなく消え去り、残された暗くら闇やみが冷たく濡ぬれそぼっていた。グリフィンドールの剣つるぎは、どことも知れず隠されている。そして、テントの中の、十代の三人がこれまでにやり遂とげたことと言えば、まだ、死んでいないということだけだった。
「それじゃ、どうしてまだここにいるんだ」ハリーがロンに言った。
「さっぱりわからないよ」ロンが言った。
「なら、家に帰れよ」ハリーが言った。
「ああ、そうするかもな」
大声でそう言うなり、ロンは二、三歩ハリーに近寄った。ハリーは動かなかった。
「妹のことをあの人たちがどう話していたか、聞いたか ところが、君ときたら、鼻も引っかけなかった。たかが『禁きんじられた森もり』じゃないかだって 『僕はもっと大変な目に遭あっている』。ハリー・ポッター様は、森で妹に何が起ころうと気にしないんだ。ああ、僕なら気にするね。巨きょ大だい蜘ぐ蛛もだとか、まともじゃないものだとか――」
「僕はただ――ジニーはほかの二人と一いっ緒しょだったし、ハグリッドも一緒で――」
「――ああ、わかったよ。君は心配してない それにジニー以外の家族はどうなんだ 『ウィーズリー家の子どもたちが、これ以上傷つけられるのはごめんだよ』って、聞いたか」
「ああ、僕――」
「でも、それがどういう意味かなんて、気にしないんだろ」
「ロン」
ハーマイオニーは二人の間に割って入った。
「何も新しい事件があったという意味じゃないと思うわ。私たちの知らないことが起こったわけじゃないのよ。ロン、よく考えて。ビルはとうに傷ついているし、ジョージが片耳を失ったことは、いまではいろいろな人に知れ渡っているわ。それにあなたは、黒こく斑はん病びょうで死にそうだということになっているし。あの人が言ってたのは、きっとそれだけのことなのよ――」
「へえ、たいした自信があるんだな いいさ、じゃあ、僕は家族のことなんか気にしないよ。君たち二人はいいよな。両親が安全なところにいてさ――」