ハーマイオニーは、黙だまって不思議な印をじっと眺ながめ続けていた。ハリーはもう一度挑戦した。
「ハーマイオニー」
「ん」
「僕、ずっと考えていたんだけど、僕――僕、ゴドリックの谷に行ってみたい」
ハーマイオニーは顔を上げたが、目の焦点しょうてんが合っていなかった。本の不思議な印のことを、まだ考えているに違いない、とハリーは思った。
「ええ」ハーマイオニーが言った。「ええ、私もずっとそのことを考えていたの。私たち、そうしなくちゃならないと思うわ」
「僕の言ったこと、ちゃんと聞いてた」ハリーが聞いた。
「もちろんよ。あなたはゴドリックの谷に行きたい。賛成よ。行かなくちゃならないと思うわ。つまり、可能性があるなら、あそこ以外にありえないと思うの。危険だと思うわ。でも、考えれば考えるほど、あそこにありそうな気がするの」
「あのぉ――あそこに何があるって」ハリーが聞いた。
この質問に、ハーマイオニーは、ハリーの当とう惑わくした気持を映うつしたような顔をした。
「何って、ハリー、剣つるぎよ ダンブルドアは、あなたがあそこに帰りたくなるとわかっていたに違いないわ。それに、ゴドリックの谷は、ゴドリック・グリフィンドールの生まれ故郷こきょうだし――」
「えっ グリフィンドールって、ゴドリックの谷出身だったの」
「ハリー、あなた、『魔ま法ほう史し』の教科書を開いたことがあるの」
「んー」ハリーは笑顔になった。ここ数か月で初めて笑ったような気がした。顔の筋きん肉にくが奇妙きみょうに強こわ張ばっていた。
「開いたかもしれない。つまりさ、買ったときに……一回だけ……」
「あのね、あの村は、彼の名前を取って命名されたの。そういう結びつきだっていうことに、あなたが気づいたのかと思ったのに」ハーマイオニーが言った。
最近のハーマイオニーではなく、昔のハーマイオニーに戻ったような言い方だった。「図書室に行かなくちゃ」と宣せん言げんするのではないかと、ハリーは半分身構みがまえた。
「あの村のことが、『魔法史』に少し載のっているわ……ちょっと待って……」
ハーマイオニーはビーズバッグを開いて、しばらくガサゴソ探していたが、やがて古い教科書を引っ張り出した。バチルダ・バグショット著ちょの「魔ま法ほう史し」だ。ページをめくっていたハーマイオニーは、お目当ての箇所かしょを探し出した。