もう一人、家族ぐるみのつき合いがあり、これも簡単に丸め込まれる友人に、長年ゴドリックの谷に住む、名高い魔ま法ほう史し家かのバチルダ・バグショットがいる。村に移った家族を歓迎しようとしたバチルダを、ケンドラは、言うまでもなく最初は拒絶きょぜつした。しかし、数年後、「変へん身しん現げん代だい」に掲載けいさいされた「異種いしゅ間かん変身へんしん」の論文に感心したバチルダが、ホグワーツのアルバスにふくろう便を送ったのがきっかけで、ダンブルドアの家族全員との付き合いが始まったのだ。ケンドラが死ぬ前に、ゴドリックの谷でダンブルドアの母親と言葉を交わせる間柄あいだがらだったのは、バチルダただ一人だった。
不幸にして、かつてのバチルダの輝かがやける才能は、いまやうすぼんやりしてしまった。アイバー・ディロンスビィは「空鍋からなべの空焚からだき」という表現で筆者に語り、イーニッド・スミークはもっと俗ぞくな言葉で、「サメの脳みそ」と表現した。にもかかわらず、筆者は百ひゃく戦せん練れん磨まの取材の技を駆く使しすることで、確たる事実の数々を引き出し、それらをつなぎ合わせた結果、醜聞しゅうぶんの全貌ぜんぼうを浮かび上がらせた。
ケンドラの早すぎる死が「呪文じゅもんの逆ぎゃく噴ふん射しゃ」のためだというバチルダの見方は、魔法界全体の見解けんかいと同じであり、アルバスとアバーフォースが後年繰くり返し語った話でもある。バチルダはさらに、アリアナが「腺せん病びょう質しつ」であり、「傷つきやすい」という家族の言い草を、受け売りしている。しかしながら、ある問題に関しては、筆者が苦労して「真ベリ実タセ薬ラム」を入手したかいがあった。なにしろ、バチルダこそ、そしてバチルダのみが、アルバス・ダンブルドアの人生における秘中ひちゅうの秘の全容を知る者だからである。初めて明かされるこの話は、崇すう拝はい者しゃが信奉しんぽうするダンブルドア像のすべてに、疑問を投げかける。闇やみの魔術まじゅつを憎み、マグルの弾圧だんあつに反対したというイメージや、自みずからの家族に献けん身しん的てきであったことさえ虚像きょぞうではないかと思われる。
母親を失い、家長となったダンブルドアがゴドリックの谷に戻ったその同じ夏のこと、バチルダ・バグショットは、遠縁とおえんの甥おいを家に住まわせることにした。ゲラート・グリンデルバルドである。
グリンデルバルドの名は、当然ながら有名である。「歴史上最も危険な闇の魔法使い」のリストでは、一世代後に出現した「例のあの人」に王座を奪うばわれなければ、トップの座に君臨くんりんしていたと言えよう。しかし、グリンデルバルドの恐怖の手は、イギリスにまで及んだことがなかったため、その勢力台頭たいとうの過程かていについては、わが国では広く知られていない。