「アリアナの死で、アルバスは取り乱していたよ。二人の兄弟にとって、あまりにも恐ろしい出来事だった。二人を残して、家族全員を失ったのだからねぇ。当然、癇癪かんしゃくも起ころうというものだよ。こういう恐ろしい状況ではよくあることだが、アバーフォースがアルバスを責せめてねぇ。ただし、気の毒に、アバーフォースは、普段から少し正気ではない話し方をする子だったが。いずれにせよ、葬式そうしきでアルバスの鼻をへし折るというのは、穏当おんとうじゃなかったねぇ。息子たちが娘の亡骸なきがらを挟はさんであんなふうに喧嘩けんかをするのを見たら、母親のケンドラは胸がつぶれたことだろう。ゲラートが、残って葬儀そうぎに参列しなかったのは残念だった……少なくともアルバスの慰なぐさめにはなったことだろうに……」
アリアナ・ダンブルドアの葬儀に参列した数少ない者しか知らないことだが、棺ひつぎを前にしてのこの恐ろしい争いは、いくつかの疑問を呈ていしている。アバーフォース・ダンブルドアはいったいなぜ、妹の死に関してアルバスを責めたのか 「バティ」が言い張るように、単なる悲しみの表れだったのだろうか それともその怒りには、もっと具体的な理由があったのだろうか 同窓生たちを攻撃こうげきして殺しかけた事件でダームストラングを放ほう校こうになっているグリンデルバルドは、アリアナの死から数時間後にイギリスから逃げ去った。そしてアルバスは恥はじからか、それとも恐れからか、魔法界の懇願こんがんに応こたえてやむなく顔を合わせることになるまでは、二度とグリンデルバルドに会うことはなかった。
ダンブルドアもグリンデルバルドも、少年時代の短い友情に関して、後年一度たりとも触ふれることはなかったと思われる。しかしながら、死し傷しょう者しゃや行方不明者が続出した大混乱の五年ほどの間、ダンブルドアが、ゲラート・グリンデルバルドへの攻こう撃げきを先延さきのばしにしていたことは疑いがない。ダンブルドアを躊躇ちゅうちょさせていたのは、グリンデルバルドに対する友情の名残なごりだったのか、それとも、かつては親友だったことが明るみに出るのを恐れたからだったのか 一度は出会えたことをあれほど喜んだ相手だ。その男を取り抑えに出向くのは、ダンブルドアにとって気の進まないことだったのか
そして、謎なぞのアリアナはどのようにして死んだのか 闇やみの儀式ぎしきの予期せぬ犠ぎ牲せい者しゃだったのか 二人の若者が栄光と支配を目指しての試みの練習中に、アリアナは偶然ぐうぜんに不都合な何かを見てしまったのか アリアナ・ダンブルドアが「より大きな善ぜんのため」の最初の犠牲者だったということはありうるだろうか
この章は、ここで終わっていた。ハリーは目を上げた。ハーマイオニーは先にページの下まで読み終えていた。ハリーの表情に少しどきりとしたように、ハーマイオニーは本をハリーの手からぐいと引っ張り、不潔ふけつなものでも隠すように、本を見もせずに閉じた。