「どうして君がここに」
どうやらロンは、この話題が出るのなら、もっとあとに出てほしかったらしい。
「あのさ、僕――ほら――僕、戻ってきた。もしも――」
ロンは咳払せきばらいした。
「あの、君がまだ、僕にいてほしければ、なんだけど」
一瞬いっしゅん、沈黙ちんもくがあった。その沈黙の間に、ロンの去っていったことが、二人の間に壁かべのように立ちはだかるように思われた。しかし、ロンはここにいる。帰ってきた。たったいま、ハリーの命を救ったのだ。
ロンは自分の両手を見下ろし、自分が持っているものを見て、一瞬いっしゅん驚いたようだった。
「ああ、そうだ。僕、これを取ってきた」
ロンは言わなくともわかることを言いながら、ハリーによく見えるように剣つるぎを持ち上げた。
「君はこのために飛び込んだ。そうだろ」
「うん」ハリーが言った。「だけど、わからないな。君はどうやってここに来たんだ どうやって僕たちを見つけたんだ」
「話せば長いよ」ロンが言った。「僕、何時間も君たちを探してたんだ。なにしろ広い森だろう それで、木の下で寝て、朝になるのを待とうって考えたのさ。そうしたら牝鹿めじかがやってきて、君が追つけてくるのが見えたんだ」
「ほかには誰も見なかったか」
「見てない」ロンが言った。「僕――」
ロンは、数メートル離はなれたところに二本くっついて立っている木をちらりと見ながら、言いよどんだ。
「――あそこで何かが動くのを、見たような気がしたことはしたんだけど、でもそのときは僕、池に向かって走っていたんだ。君が池に入ったきり出てこなかったから、それで、回り道なんかしていられないと思って――おい」
ハリーはもう、ロンが示した場所に向かって走っていた。二本のナラの木が並んで立ち、幹みきと幹の間のちょうど目の高さにほんの十センチほどの隙閫� 銀色の牝鹿 The Silver Doe(7)