ハーマイオニーは世にも恐ろしい非難ひなんの形相で、ロンを指差した。まるで呪詛じゅそしているようだった。ロンがたじたじと数歩下がったのも無理はないと、ハリーは思った。
「私はあとを追った あなたを呼んだ 戻って、とあなたにすがった」
「わかってるよ」ロンが言った。「ハーマイオニー、ごめん。本当に僕――」
「あら、ごめんが聞いて呆あきれるわ」
ハーマイオニーは、声の制御せいぎょもできなくなったように甲高い声で笑った。ロンは、ハリーに目で助けを求めたが、ハリーは、どうしようもないと顔をしかめるばかりだった。
「あなたは戻ってきた。何週間も経たってから――何週間もよ――それなのに、ごめんの一言ですむと思ってるの」
「でも、ほかに何て言えばいいんだ」
ロンが叫んだ。ハリーはロンが反撃はんげきしたのがうれしかった。
「あーら、知らないわ」ハーマイオニーが皮肉たっぷりに叫び返した。「あなたが脳みそをしぼって考えれば、ロン、数秒もかからないはずだわ――」
「ハーマイオニー」
ハリーが口を挟はさんだ。いまのは反則はんそくだと思った。
「ロンはさっき、僕を救って――」
「そんなこと、どうでもいいわ」ハーマイオニーはキーキー声で言った。「ロンが何をしようと、どうでもいいわ 何週間も何週間も、私たち二人とも、とっくに死んでいたかもしれないのに――」
「死んでないのは、わかってたさ」
ロンの怒ど鳴なり声が、初めてハーマイオニーの声を上回った。盾たての呪文じゅもんが許すかぎりハーマイオニーに近づき、ロンは大声で言った。
「ハリーの名前は『予よ言げん者しゃ』にもラジオにもベタベタだった。やつらはあらゆるところを探してたし、噂うわさだとか、まともじゃない記事だとかがいっぱいだ。君たちが死んだら、僕にはすぐに伝わってくるって、わかってたさ。君には、どんな事情だったかがわかってないんだ――」
「あなたの事情が、どうだったって言うの」
ハーマイオニーの声は、まもなくコウモリしか聞こえなくなるだろうと思われるほど甲高かんだかくなっていた。しかし、怒りの極致きょくちに達したらしく、ハーマイオニーは一時的に言葉が出なくなった。その機会をロンがとらえた。
「僕、『姿すがたくらまし』した瞬間しゅんかんから、戻りたかったんだ。でも、ハーマイオニー、すぐに『人さらい』の一味に捕まっちゃって、どこにも行けなかったんだ」
「何の一味だって」
ハリーが聞いた。一方ハーマイオニーは、ドサリと椅い子すに座り込んで腕組みし、足を組んだが、その組み方の固さときたら、あと数年間は解とくつもりがないのではないかと思われた。
「人さらい」ロンが言った。「そいつら、どこにでもいるんだ。『マグル生まれ』とか『血を裏切る者』を捕まえて、賞しょう金きん稼かせぎをする一味さ。一人捕まえるごとに、魔ま法ほう省しょうから賞金が出るんだ。僕は一人ぼっちだったし、学生みたいに見えるから、あいつらは僕が逃亡中の『マグル生まれ』だと思って、ほんとに興奮こうふんしたんだ。僕は早く話をつけて、魔法省に引っ張っていかれないようにしなくちゃならなかった」