「これは、灯ひを点つけたり消したりするだけのものじゃない」ロンが言った。「どんな仕組みなのかわからないし、なぜそのときだけそうなって、ほかのときにはならなかったのかもわからないけど。だって、僕は、二人と離はなれてから、ずっと戻りたかったんだからね。でも、クリスマスの朝、とっても朝早くラジオを聞いていたんだ。そしたら、君の声が……君の声が聞こえた……」
ロンは、ハーマイオニーを見ていた。
「私の声がラジオから聞こえたの」
ハーマイオニーは信じられないという口調だった。
「違う。ポケットから君の声が聞こえた。君の声は――」
ロンはもう一度「灯ひ消けしライター」を見せた。
「ここから聞こえたんだ」
「それで、私はいったい何と言ったの」
半なかば疑うような、半ば聞きたくてたまらないような言い方だった。
「僕の名前。『ロン』。それから君は……杖つえがどうとか……」
ハーマイオニーは、顔を真っ赤に火ほ照てらせた。ハリーは思い出した。ロンがいなくなって以来、二人の間でロンの名前が声に出たのは、そのときが初めてだった。ハーマイオニーが、ハリーの杖を直す話をしたときに、ロンの名前を言ったのだ。
「それで僕は、これを取り出した」
ロンは「灯消しライター」を見ながら話を進めた。
「だけど、変わったところとか、別に何もなかった。でも、絶対に君の声を聞いたと思ったんだ。だからカチッと点けてみた。そしたら僕の部屋の灯あかりが消えて、別の灯りが窓のすぐ外に現れたんだ」
ロンは空あいているほうの手を挙あげて、前方を指差し、ハリーにもハーマイオニーにも見えない何かを見つめる目をした。
「丸い光の球たまだった。青っぽい光で、強くなったり弱くなったり脈を打ってるみたいで、『移ポー動トキー』の周りの光みたいなもの。わかる」
「うん」
ハリーとハーマイオニーが、思わず同時に答えた。
「これだって思ったんだ」ロンが言った。「急いでいろんなものをつかんで、詰めて、リュックサックを背し負ょって、僕は庭に出た」
「小さな丸い光は、そこに浮かんで僕を待っていた。僕が出ていくと、光はしばらくふわふわ一緒いっしょに飛んで、僕がそれに従ついて納な屋やの裏うらまで行って、そしたら……光が僕の中に入ってきた」
「いま何て言った」ハリーは、聞き違いだと思った。
「光が、僕のほうにふわふわやって来るみたいで――」
ロンは空あいている手の人差し指で、その動きを描いて見せた。
「まっすぐ僕の胸のほうに。それから――まっすぐ胸に入ってきた。ここさ」
ロンは心臓に近い場所に触ふれた。
「僕、それを感じたよ。熱かった。それで、僕の中に入ったとたん、僕は、何をすればいいかがわかったんだ。光が、僕の行くべきところに連れていってくれるんだって、わかったんだ。それで、僕は『姿すがたくらまし』して、山間やまあいの斜面に現れた。あたり一面雪だった……」